『あのクズ』海里の目を覚まさせた明美の言葉 超えてはいけない一線を超えた悟の正体
「誰もが幸せだと思うことが幸せなわけじゃない。ほこ美の幸せはほこ美が決める!」 明美(斉藤由貴)が半年ぶりにアメリカから日本に帰国した海里(玉森裕太)の目を覚まさせた『あのクズを殴ってやりたいんだ』(TBS系)第8話。 【写真】明美(斉藤由貴)と話す海里(玉森裕太) ほこ美(奈緒)のボクシングのプロテスト当日に間に合うように帰国するつもりが、悪天候のためフライトが全便欠航になり1日遅れでの帰国になってしまう何かと間の悪い海里。その間に大葉(小関裕太)は宣言通りほこ美に告白をし、プロテスト合格祝いの食事に誘い出す。海里がいたはずの場所が大葉に取って代わられているかのように感じ、何より大葉の前で見せるほこ美の弾けんばかりの笑顔にショックを受け気後れしてしまう。 はなから自分の希望も伝えず身を引こうとしてしまうのは海里の優しさでもある一方、悪い癖で何事も外に出さずに自己完結して自身に閉じてしまう。ほこ美のことも自分では幸せにできないと勝手に決めつけ臆病になり弱気にばかりなってしまうが、それをこじ開けたのは他でもないほこ美の幸せを願う周囲の想いだった。 奔放で放任主義かに見えた明美だったが、ほこ美が危険も伴うボクシングにのめり込んでいくことに不安や迷いを隠し切れない親心を覗かせる。自分の娘が出会えた本気で好きなことを応援したい、彼女の幸せを願いたいという気持ちと娘の身を案じる気持ちの狭間で揺れ動く自身の状況と、目の前で自信がなさそうに煮え切らない態度を取る海里が重なった部分もあったのだろう。 冒頭の言葉と共に「あなたにできることはあなたの正直な気持ちを伝えること、それだけ」と海里の背中を目一杯押しながら、自分自身も娘を信じようと踏ん切りがついたようだった。傷つくかもしれないことがわかっていても、彼女が望む幸せや熱中がそこにあるのならば見守るのみという明美の愛情深さも、明美と海里のやり取りが落ち着いた頃にタイミングを見計らって席に戻る大葉の優しさもあったかすぎる。 そして海里以上に海里の幸せや本心に敏感で、それを諦めない周囲の想いに触れて、ようやく自分の気持ちをぶつけようと海里が行動を起こすも、それをどうしても許せない人物による阻止を食らってしまう。 ずっとずっと7年前で止まった人生をただただ死んだように生きていてほしかった海里に特別でとびっきりな存在ができて、どんどん自分の殻を破り前進しようとする姿を目の当たりにして複雑な感情を抑え切れないのが、同居人の悟(倉悠貴)だ。やはり彼の兄こそが大地(大東駿介)のようで、両親が離婚後も兄弟は仲が良く交流があったようだ。 大切な存在に仕事に将来の夢まで手に入れ始めた海里の変化に気持ちが追いつかず、そんな彼から最も大切な存在を奪ってやろうと、ほこ美の出稽古の相手にかなりの体格差のある選手を手配した上に、とんでもない危険な依頼を入れる。ついに悟は超えてはいけない一線を超えてしまった。 危険を冒してまで、ほこ美をKOすれば100万円を払うという報酬話を持ちかける悟こそ、7年前でパタリと止まってしまっている時間を少しでも前に進められるように願わずにはいられない。 悟が望んだ通りの展開に見舞われ、意識不明の状態に陥ってしまったほこ美だが、試合前に見た海里があの神社でずっと待っているというメッセージこそが、彼女をこちらの世界に引き戻してくれますように。 海里が出会ってすぐの頃に、ほこ美が話していた好きなものをいまだにちゃんと覚えていたからこそ入手できた、月のモチーフのネックレスを無事本人に渡せますように。ほこ美が殴ってやりたいと思った出会ったばかりの頃のクズだった海里にとって、すでに当時からほこ美はやっぱり特別な存在だったことが伝わりますように。
佳香(かこ)