会社に壊されない生き方(10) ── 月3万円ビジネスで生きていく(上)
THE PAGE
1か月に3万円ほどの稼ぎを複数作る小規模ビジネス「月3万円ビジネス」を紹介した。もしも会社を辞めてこのビジネスだけで生きていくとするなら、どう考え、どう行動すれば良いのだろうか。「2012年からこのビジネスで生計を立てています」という千葉県木更津市在住の月3万円ビジネス協会代表理事、前田敏之さん(42)に、ビジネスの実例や生活の実情を聞いた。
9月上旬、千葉県木更津市内陸部の田園地帯。前田さんの自宅を訪ねた。家は、知り合いのつてで築約60年の古い一軒家を借り、1人で住む。土地の広さは約100坪、敷地内には小屋も3つある。 家賃は口外しないよう家主に釘を刺されているそうだが、東京都心の1Kマンションの半分以下だという。電気代は月に約1500円。電力使用量の多い冷蔵庫は使わない。ガス会社とは契約せず、風呂の湯は入居前から設置されていた太陽熱温水器を使い、水温が下がる冬期は薪で追い炊きをする。 野菜はときおり近所から分けてもらうほか、庭では大葉やハーブを育てる。その他の食材費、軽トラックの燃料費、通信費、社会保険料など諸々を含めても5万円ほどに収まるというから、生活費はかなり低く抑えられている。 前田さんは、「支出を減らせば、収入は少なくても良いと思っています。ある会社員の先輩から小遣いが月3万円だと聞きましたが、僕はそれよりも多く使えます」と話す。
自宅から車で5分ほどの場所に、前田さんが田んぼを借りているというので、案内してもらった。 残念ながら、広さ約2アールの田んぼの半分以上は、稲が倒れたり土の面が露出したりして荒れている。イノシシにやられたという。「自然との共生を考えながらやっているのですが、イノシシとは共生できないので(被害にあわなかった残りの田んぼに)柵を作りました」と苦笑する前田さん。動物除けの柵で囲われたところでは、青々とした稲穂が風にそよいでいた。 この田んぼでは、田植えや草刈り、稲刈りといった各作業に参加できる米づくりイベント「ゼロからの米づくり」を月3万円ビジネスの1つとして展開している。足踏み脱穀機やせんばこき、唐箕(とうみ)などの古い道具を使って、手作業での米づくりを学べる。 各作業の回ごとで参加費は異なるが、おおむね昼食・材料代込みで大人2000~3000円の参加費を設定する。6月に実施した田植えイベントには、東京都や千葉県から16人が参加したという。「田んぼ作業だけではなく、ピザを焼いたり、ミュージシャンを呼んだりと楽しめるよう工夫しています」。