映画「はたらく細胞」は、どのくらい破壊力のある作品なのか?【コラム/細野真宏の試写室日記】
映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。 また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。 更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑) 今週末2024年12月13日(金)から「はたらく細胞」が公開されました。この作品には何か底知れない潜在力のようなものを感じるので、今回は同作について考えてみます。 まず、本作の特徴にフジテレビ出身の「武内英樹監督作品」という点があります。 そのため、武内監督の過去作「翔んで埼玉」に割と近い作風となっていました。 「人間の体内で働いている細胞」を描いている作品なので、キャッチコピーは「笑って泣けてタメになる」となっています。 個人的には最後の「タメになる」の部分には、やや疑問を持っています。 確かにメインの赤血球や白血球など、体内の細胞の働きを描くので「タメになる」とも言えますが、学習的な効果にはそれほど重きが置かれていない作りになっているのです。 例えば、「翔んで埼玉」を見ると埼玉の地名をみんなが覚えられるのか、というと、あくまで埼玉をベースで描いているだけなので、覚えられない人の方が多いと思います。 ただ、本作の場合は、エンドロールで出てくる文字の解説も併せて見ると頭に残る面も出てくるので、「タメになるのかどうかは観客次第」とも言えそうです。 また、本作は「笑って泣けてタメになる」というキャッチコピーにある「笑い」と「泣き」と「タメになる」が、良くも悪くも飛び抜けずに描かれているように感じました。 そのため、どの要素も決して秀でてはいない面もあって「人によっては泣くのかな?」と感じで、どのくらいで「泣き」が生じるのか未知数な面があります。 同様に「笑い」についても「翔んで埼玉」までの破壊力にはなっていないように感じました。 その一方で、「はたらく細胞」にはダブル主演のひとり佐藤健が全身白ずくめで白血球役を演じ、アクションシーンをこなしています。 このアクションシーンは佐藤健の代表作「るろうに剣心」シリーズのスタントコーディネーターを担当した大内貴仁がアクション監督を務めるなど、本格的になっていました。 さらにはキャストは、メインキャストに加えて、武内英樹監督ならではの「翔んで埼玉」シリーズでお馴染みのキャストも要所要所で登場し、全体として「豪華さ」を醸し出すことに成功していると思います。 この辺りは付加価値要素としてプラスとなり得ます。 このように、「はたらく細胞」は、「笑い」×「泣き」×「タメになる」×「アクション」×「豪華な顔ぶれ」という総合力がどのくらい評価されるのかで作品の成否を分けることになりそうなのです。 以上のように考えると、「はたらく細胞」は、第1弾「翔んで埼玉」の37.6億円という社会現象的になった時のようなブームまで行けるのかは現時点では見極めにくい面があります。 その一方で、「翔んで埼玉」の続編くらいのポテンシャルはあるように思えます。 「翔んで埼玉 琵琶湖より愛をこめて」が興行収入23.3億円だったので、初めての実写映画化で興行収入25億円くらいは見込めそうで、総合力の面から興行収入30億円台に乗せていく可能性も低くないように感じます。 そのため、制作費4.5億円、P&A費を3億円と想定すると、劇場公開だけでリクープするラインは興行収入19億円となるので「成功モデル」となりそうです。 「翔んで埼玉」と「はたらく細胞」の1番の違いは、「はたらく細胞」は「ファミリー映画」としての集客効果が大きいことが見込まれる点です。 冬休みシーズンに突入する時期において、本作が“冬休みファミリー映画の本命”として認知されると、「翔んで埼玉」(第1作)さえも超えるような動きが出るかもしれません。果たしてどのくらいの破壊力となるのか、大いに注目したい作品なのです。