<上海だより>悩ましき中国人旅行客の非常識行動 中国現地では変化も
今年の春節も多くの中国人旅行客が日本を訪れ、「爆買い」で日本を賑わせました。しかし、経済効果のポジティブな面とは裏腹に、多くの日本人はやはり中国人のマナーに対して疑問を抱いています。これは、日本に限らず世界各地の人々はおろか、中国政府や中国人自身が感じている問題と言えるでしょう。一方で、まだまだ少数かもしれませんが、確かな変化を感じる瞬間もあります。特に、上海におけるマナーの変化はここ数年で顕著です。 爆買中国人は36万人、喜んでいられない悩ましき状況とは
マナー教育は、子から父へ
中国といえば、信号を守らないことが有名でした。ところが、上海の街中を歩いていると近頃は面白い光景を目にします。赤信号を渡ろうとする父親に対して、子供が「赤信号は渡っちゃダメだよ」と注意するのです。これは学校教育の賜物なのでしょうか。このような傾向は、概ね20代以下の若い世代の中国人に見られる特徴です。
変わらなきゃいけない、でも今は“どうしようもない”
また中国は車の運転がとても荒く、特にタクシーは安全運転を徹底する日本のタクシーと比べると、驚くほどのスピードで走っていることもあります。そんなタクシー運転手でさえ、一部の人はマナーについてこのように語り始めるのです。 「日本ではこんなマナーが悪いことはないだろう? 中国は今、まさに変化しているんだ。当然、前の習慣から変われない人も大勢いる。これはどうしようもないんだ。でも、いずれは絶対に変わっていくし、変わらなきゃいけないんだ」 この「どうしようもない」という表現は、中国では頻繁に耳にします。やはり13億の人口を抱える中国、解決が難しいことが多々あるが故の表現かもしれません。
マナーの向上は、サービスの向上も必要とする
さらに、人々の意識がこのように変わり始めている上海では、消費者のサービスに対する要求も高まっており、サービス業における接客態度の向上も顕著に感じられます。あるローカル系のコンビニでは、お釣りを渡す際にもう一方の手をお客様の手の下に添えるということを徹底している店もありますし、カフェなどで飲み物を提供する際に、「大変お待たせしました」と一言添える店員も増えてきました。また、ある飲食店では空いたお皿を下げる前には「お下げしてよろしいですか?」と必ず確認することを徹底するよう教育していました。これは、以前では考えられなかったことです。 多くの中国人が日本やその他の外国へ旅行することが普通になった今、彼らはその旅行先で満足のいくサービスとは何かを自らの体験でもって感じていますし、自国でも高水準のサービスを求めるようになっています。実際、現地のグルメ系口コミサイトのコメントも、味だけでなくその店のサービスが良いかどうか、という評価が非常に多く見受けられます。 私たち日本人だけでなく、中国人自身が課題と感じているマナーやサービスですが、果たしてこれまでの経済成長と同じ速度で克服することはできるのでしょうか。訪日中国人旅行客は、これからも増加していくことが想定されます。受け入れる側である私たちも、そんな彼らの“変化”を見つめてみると、また違った見え方が生まれるかもしれません。 稼農慧(かのう・けい) 上海在住ライター