赤潮モニタリングに定期便航空機活用 世界初、北大とJALが連携
北大と日本航空(JAL)は、JALグループの北海道エアシステム(HAC)が保有する定期便航空機1機に観測用カメラを装着し、来夏から函館湾などでの赤潮モニタリングに乗り出す。上空から撮影した画像データを基に赤潮発生を早期に検知し、漁業者に情報提供することで水産被害を抑制するのが狙い。民間航空機での大気観測は例があるが、海洋調査は世界初の取り組みだという。
北大とJALが2022年6月に結んだ、持続可能な社会づくりを目指す包括連携協定の一環。従来の赤潮モニタリング手法として知られる採水と検鏡、ドローン、セスナ機(チャーター)、人工衛星は、手間が掛かることや調査範囲が狭い、非常に高額、解像度が低いなどの問題点があり、同じ飛行経路を定期的に運航する航空機が赤潮モニタリングに最適だと判断した。
HACのATR42―600型機の機体後方下部の胴体内部に観測用カメラ3台を設置。モニタリング対象路線は札幌(丘珠)―函館、函館―奥尻、札幌(丘珠)―利尻とし、近年赤潮が頻発する函館湾を皮切りに、噴火湾、奥尻海峡、利尻水道でモニタリングを実施予定。カメラで撮影した画像を北大に送り、大学院水産科学研究院の笠井亮秀教授(海洋環境学)が開発した赤潮検出手法で解析、赤潮分布を推定する。定期便でのモニタリングは継続的に行い、終了期間は決めていない。 笠井教授は「将来的には上磯郡漁協や函館市漁協、北斗市、函館市に情報提供し、養殖いかだの移動や粘土散布などの対策を講じ、赤潮被害の軽減につなげたい」と話すとともに、赤潮多発海域の西日本での展開も視野に入れ「地元漁業者の要望に応えたい」と意欲を示している。 赤潮は、海中の植物プランクトンが異常増殖し海水が赤褐色に変わる現象で、魚介類が窒息死して水産業に大きな被害をもたらす。道内では、21年秋に道東を中心に大規模な赤潮被害が発生し90億円超の被害があったほか、九州では毎年大規模な漁業被害が出ており、10年以降は北海道でも有害赤潮が頻発し、地球温暖化に伴い今後増加する恐れが指摘されている。 道によると、10月中旬に函館港万代埠頭(ふとう)付近、今月上旬に北斗市谷好沖の函館湾で赤潮を確認している。いずれも漁業被害はなかった。
函館新聞デジタル