また巡りくる7・5ウイグル大虐殺「ウルムチ事件」から15年 弾圧で1万人が消えた夜…悔やまれ続ける安倍元首相の不在
そんな状況から、ドナルド・トランプ米政権が20年、「中国当局がウイグル人に行っていることはジェノサイドだ」と認定したのである。
近年、米国の議会と政府は「ウイグル人権法」に加えて、ウイグル強制労働防止法などを矢継ぎ早に成立させ、施行させてきた。これらが中国への圧力として機能し、ウイグル弾圧が軽減されることが期待されたが、果たして現況はどうか。
「ウイグル人やその他のトルコ系民族は、10万人あたり3814人と推定される割合で投獄されており、これは中国全体の10万人あたり80人の割合の47倍である」
これは今年5月、米国の政府系メディア「ラジオ・フリー・アジア」が報じた惨状だ。
一方、最近、在日ウイグル人に聞いたところでは、中国当局はわずかばかりウイグル人へのパスポート発給を許し、日本への新たな留学生の送り出しなども再開しているという。
訪日を果たしたウイグル人の若者らにも自由はない。在日中国人のネットワークと連携した中国当局による〝監視〟があるからだ。
在米ウイグル人の友人がため息交じりにこう言った。
「日本にはウイグル問題への理解者は多いけれど、欧米に比べて政治的な取り組みは少しスローだね。プライムミニスター安倍が生きていたら…」
ウイグル問題に最も熱心な日本の政治家として、世界中のウイグル人が敬意を寄せる安倍晋三元首相の不在が、この件においても悔やまれ続ける。
その安倍氏の命日(7月8日)もまた巡ってくる。安倍氏なき今、日本人、ウイグル人、そして世界の行く手に暗さ増す日々である。
■有本香(ありもと・かおり) ジャーナリスト。1962年、奈良市生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。国際関係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に『中国の「日本買収」計画』(ワック)、『「小池劇場」の真実』(幻冬舎文庫)、『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』『「日本国紀」の天皇論』(ともに産経新聞出版)など多数。