西野監督退任決定もハリル教訓でクリンスマン反対論が浮上し後任監督が混迷
細やかな意思疎通など、日本人監督だからこそーーのメリットが目立ったし、初めて日本人監督に長期の育成、強化を預けるという議論が起きてもおかしくないと思うのだが、今大会の総括を行わないまま(ブラジル大会もそうだったが)、世界の舞台での実績のある外国人監督にこだわって、次の指導者探しに舵を切り、候補者と水面下で接触している日本サッカー協会の姿勢が不可解だ。しかも、西野監督の続投論が強まることを避けたいか、のように西野監督の退任を意図的に表に出した狙いもわかりにくい。 一部ではドイツを率いてW杯ドイツ大会で3位に入ったクリンスマン氏に決定したかのように報じられている。だが、協会内には反対論が強くあって、田嶋会長の言葉通り、現在、白紙状態に戻っているという。 実は、ハリルホジッチ監督の電撃解任を決めた際に、日本のサッカーや、日本の文化をハリルホジッチ監督が知らなかったことが、選手などとのミスコミュニケーションを起こしたという根っこの部分にあったため、今後、外国人監督を招聘する際には、Jリーグの監督経験者など、なんらかの形で日本サッカー、日本文化への理解があることを条件にしたい、という声が技術委員会内で挙がっていた。 いわゆるハリルの教訓である。 いくらクリンスマン氏がビッグネームでも日本サッカーや日本文化との接点は少ない。ハリルホジッチ監督のケースと同様に、監督就任後に、日本人のメンタリティや特徴を学びJリーグを視察して選手の顔と名前を一致させるというゼロどころかマイナスからスタートした場合、今回のW杯で西野監督が打ち出した方向性さえ、またゼロに戻ってしまう危険性がある。そう考えるとクリンスマン氏に反対論が出てくるのも健全で評価すべき議論だろう。 確かに歴代の日本代表監督のうち、ハンス・オフト氏、イビチャ・オシム氏のケースは、Jリーグの監督経験を経て、代表監督になったため、異文化ギャップというものはなかった。 そうなると外国人監督を招聘する場合は、かつて名古屋グランパスで指揮を取ったことがあり、今季限りでアーセナル監督を退任する、名将、アーセン・ベンゲル氏(68)など候補者が限られるため、再び日本人監督案が浮上してくる可能性もある。 その場合、東京五輪で指揮をとる森保一氏のA代表との兼任案や、FC東京の長谷川健太氏、名古屋グランパスの風間八宏氏ら、Jリーグで結果を残した指導者も候補者になってくるだろう。いずれにしろ、今大会の総括を行った上で、4年後、8年後を見据えて、どんな指導者が必要になるのか、という徹底した議論が必要だ。海外の監督決定プロセスのように、まずは、日本のコンセプトを打ち出した上で、堂々と候補者と面談をしてもいいのではないか。 田嶋会長は、「早い時期に決めたい」というが、何も慌てる道理はない。A代表は、9月7日、11日に親善試合が組まれているが、何も、そこに新監督を間に合わせる必要はないだろう。ブラジル大会後、明確なコンセプトを打ち出さないまま、実績と名前だけに飛びつきハビエル・アギーレ、ハリルホジッチと、失敗してきた過去を教訓にすべきである。