国は一斉点検実施 静清BP橋桁事故発生から6日で1年
2023年7月、静岡市清水区尾羽の国道1号静清バイパス「清水立体工事」で設置作業中の橋桁が落下し、8人が死傷した事故は6日に1年を迎える。業務上過失致死傷容疑による県警の捜査や、労働安全衛生法違反容疑に基づく静岡労働基準監督署の調査は依然として続いている。同事務所は事故のあった7月6日を「しずこく安全の日」と定め、5日に事故現場で安全講習会や安全パトロールなどを行う予定。 事故は昨年7月6日未明に発生した。長さ約65メートル、重さ約140トンの橋桁が高さ9メートルから落下した。発注者の国土交通省静岡国道事務所が設置した事故調査委員会は、橋桁をつっていた架設部材のセッティングビームの枕木の役割を果たす架台が不安定な状態で設置され、セッティングビームが落下、橋桁とのボルト接続部が破断する事態を招き、事故を起こした可能性が高いとした。 ■仮設部材の強度焦点 識者解説 勝地弘 横浜国立大教授(構造工学) 警察や労働基準監督署の捜査・調査が今も続いている。地元住民は事故の原因究明を望んでいるが、いくつもの要因が絡み合い複雑なため、慎重に調べを進めているのではと考える。 清水立体工事での悲惨な事故を受け、一般社団法人日本橋梁(きょうりょう)建設協会は2023年11月、ガイドライン「鋼橋架設工事の事故防止対策―セッティングビームを使用した横取り、降下」を作成した。担当した「橋梁架設時の事故防止安全対策検討特別委員会」では自分も顧問を務め、議論に加わった。業界のエンジニアたちは「仮受け桁」とも呼ばれる仮設部材のセッティングビームの状態について最大の関心を寄せていた。 清水立体工事では、セッティングビームは橋桁西側にボルトで取り付けられ、やじろべえのような構造で約140トンの橋桁をつっていた。一番のポイントは「現場での複雑な条件を想定したうえで、セッティングビームの構造やジャッキ装置などの調整設備を設計していたか。どんな設計指針に基づき設計し、それは果たして十分であったのか」だろう。今回の事故の場合不測の事態は、一般的な工法で横取り降下を行った後、橋桁が外側に約10センチずれ、修正作業ができなかったことだった。修正ができなかった場合の対応(元に戻す、別の方法など)の施工手順が決められていたのかどうかも焦点になる。 捜査機関は現場だけではなく、セッティングビームの構造計算書などがある本社なども捜索したのでは。架設計画段階から振り返って事故の原因究明を試みている可能性がある。
静岡新聞社