縄文時代の出土品「石棒」とは? 年間30日しか開館しない博物館が注目を集める理由 岐阜県・飛騨市
岐阜県飛騨市の山間にある博物館「飛騨みやがわ考古民族館」。ここは人手不足ゆえに年間30日しか開館しないのですが、先週末は東京や埼玉から来館者が。実はこの博物館、いまあるもので注目を集めているのです。
"魚肉ソーセージ"から連想できるもの…? 縄文時代の出土品「石棒」の正体
博物館内の古民家で、来館者たちがたき火を囲みながら食べていたのはカレー。具材は、当時もこのあたりでとれたであろう木の実や果物、キノコなどです。ただ、その中にちくわや魚肉ソーセージなど、明らかに現代の食材が混ざっていました。 スタッフの説明によると、ちくわと魚肉ソーセージは「石棒」をイメージしているということなのですが、この石棒こそが、ひそかに注目されている縄文時代の出土品なのです。
実物を見るために向かったのは、普段は入ることができない保管庫。箱の中には大きなソーセージのような柱状の石が…。そう、石棒とは男性器を模した縄文時代の石器なのです。 実は、飛騨市宮川町では縄文時代のものが多数出土していて、中でも石棒の数は全国で一番多いといいます。それを象徴するかのように、博物館には2本の石棒がゆっくりと回る一風変わった展示もありました。これは館長の発案ということですが、決して悪のりしているわけではありません。男性器をかたどった信仰は全国いたるところにあり、子孫繁栄、五穀豊穣などを祈ったと考えられています。 ですが、なぜ宮川町で石棒が数多く出土しているのでしょうか。
出土の秘密は柔らかい"塩屋石" 「石棒クラブ」発足でファンも増加!
その答えは、博物館の隣の山にあるということで、来館者一緒に山中へ。険しい山道を進み、倒れた枝をくぐった先にあったのは、通称・塩屋石(しおやいし)という岩石でした。 飛騨みやがわ考古民俗館 学芸員・三好清超さん: 「柱状にきれいに割れて、これが塩屋石の特徴になります。ここで資源を獲得して自分たちの集落にもって帰って"石棒"作りをしていた」 塩屋石は石の中では柔らかく、自然界で柱状に割れる性質があります。宮川町ではこの柱状の石がとれるため、縄文人たちは大量に石棒を作ることができたと考えられています。山中には塩屋石がいたるところにあり、来館者からも「あんなに石棒の材料がごろごろしているのがびっくり」という驚きの声が上がっていました。 他にも「時を経た現物を今の時代に実際に見れるというのがすごいなあ」「(石棒の実態が)分からないところにロマンがある気がして分からないから面白い」などの感想もあり、多くの人が石棒に魅了されていました。