フリーアナウンサー・神田愛花『いざ出陣!ファミリーセール参戦!』
春といえば、進学や入社など新たな門出のシーズン。ワクワクと不安を抱(いだ)きながら、準備でバタバタしている方も多いだろう。そんな中、人知れず盛んに開催されているイベントがある。 【画像】個性あふれる神田愛花さんの直筆イラスト(1回~45回)はこちら ファミリーセールだ。 ファミリーセールというと、お洋服の会社で働く人やその家族向けに秘密裏に開催されるセール、というイメージだろう。だが私が大学生の頃、母が友達から有力情報を入手してきた。その会社の人とお友達になれば、入場チケットを回してもらえるというのだ。(ならばローラー作戦だ!)と、アパレルブランドでアルバイトをしてみたり、社会人になってからは取材先が服飾関係になるようなニュースネタを探してみたりした。おかげで大好きなブランドから興味のないブランドまで、さまざまなファミリーセールに行けるようになった。 どのファミリーセールも、年々参加人数が増えている。たとえば15年近く皆勤賞で参加していたあるファミリーセールの場合、会場が本社ビルから東京ビッグサイトにサイズアップ。開場前から数百人が並ぶ、大規模イベントに変貌したのだ。しかも、チケット制ではなく、公式サイトに登録した希望者全員に案内が届くシステムに変わっている。 さらには、ファミリーセールの集客を代行するサイトまで出現。そのサイトに登録をすれば、誰でもさまざまなブランドのファミリーセール情報が届くようになった。手続きは入場用QRコードを表示させるだけ。よってローラー作戦は終了。楽になったなぁと感動した。 だが、そのサイトを通して、あるファミリーセールに行った時、愕然(がくぜん)とした。開場時間は13時。2時間並ぶことを想定して11時に会場に到着したら、すでに買い物をしている人が何人もいたのだ。「えー!?」と声が出て、カーッと体温が上がった。どんなに早起きになろうと先頭集団として入場し、陳列がキレイな状態で商品を吟味(ぎんみ)するのが私のスタイル。今回だって(早く入れるなら早く来ただろーが!!)。怒りに満ちた言葉を必死に抑え、係の人に説明を求めた。すると「以前からご参加いただいている方は10時のご案内です。そちらのサイト経由の方は13時のご案内です」と。 古参組からしたら、当然の対応かもしれない。だが、だが!! それならハッキリと書いてほしい。「古参組は3時間前の入場です。よってあなた方は、すでに掘り出し物もなく、しっちゃかめっちゃかになった陳列棚で頑張ってお買い物をしていただくことになります」と。 (帰ってやる!)と思ったが、(もしかしたら古参組のおこぼれが残ってる!?)という情けない思いに負け、2時間並ぶことに。案の定、中に入れた時には掘り出し物なんて何一つ、残っていなかった。 ◆春の戦場、ここにあり! この経験のショックと、新型コロナウイルス感染拡大の時期が重なり、生き甲斐だったファミリーセールから数年遠ざかっていた。 でもこの春は、久しぶりに二つのファミリーセールに行く。一つは、大好きで長年購入してきたブランドだ。昨年の秋冬でブランドが終わりを迎えてしまい、在庫を売り切るための最後のファミリーセールになる。「沢山の思い出をありがとう」と伝えるべく、本気で参加したい。 もう一つは、この原稿を書きながら並んでいるファミリーセールだ。こちらは初めて行くブランド。開催自体が初めてだそうで、会場は自社オフィスだ。ゆっくり見られる気がして参加したくなった。 今回も2時間前に到着。整列順は15番目で、ギリギリ先頭集団の一員として並べている。後ろは長蛇の列で最後尾が見えない。(初開催とはいえ、激闘が予想されるなぁ)と、気を引き締める。係の人たちが持ち場に着き、会場に音楽が流れ始めた。入り口のガラス扉の向こうに、ドバーッと並べられた大量のお洋服やバッグたちが見える。すべての品が「買ってー♡」と猛アピールしているように感じ、(可愛い! ぜーんぶ買ってあげちゃう!!)と興奮する私。するともう一人の私が、(落ち着きなさい、愛花!)と抑え込んでくる。そしてついに「まもなく開場しまーす」という係の人の声が響き渡った。さぁ、いよいよだ!! 数年ぶりのファミリーセール!! 扉がファーッと開いた時、武者震いがした。 かんだ・あいか/1980年、神奈川県出身。学習院大学理学部数学科を卒業後、2003年、NHKにアナウンサーとして入局。2012年にNHKを退職し、フリーアナウンサーに。以降、バラエティ番組を中心に活躍し、現在、昼の帯番組『ぽかぽか』(フジテレビ系)にメインMCとしてレギュラー出演中 『FRIDAY』2024年4月5・12日号より 文・イラスト:神田愛花
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