34坪の三角地に立つ家。都心の住宅密集地でも室内は驚くべき開放感!建築家のアイデアが光る解決策とは…
隣の住宅が間近に迫る敷地では、外に対しては閉じて、家のなかを開くのが基本的な解決策です。ところが、建築家の下吹越武人さんの自邸「K2 house」は、巧みな庭の計画や、高低差を生かした設計、光のコントロールなどで変化に富んだ心地よい住まいを実現。三角形の変形敷地を生かして、近隣と住み手の両方に豊かな環境をもたらしています。 その具体的な工夫とは?建物に“切り込み”を入れたユニークな間取りにも注目です。 【写真集】34坪の変形敷地を生かした建築家・下吹越武人の自邸 「この家に引っ越してまず感じたのは、キャンプ場でテントのなかにいるような感覚でした」と、設計を手掛けた建築家の下吹越武人さん。布一枚で外部と隔てられるテントになぞらえた理由は主に2つあるといいます。
道路側に設けたスリットを庭にするプラン
1つ目の理由が“庭のプラン”。この「K2house」が立つのは、都内の住宅密集地の三角形の敷地。北東の接道面以外は、近隣の住宅が間近に迫っています。こうした場合、一般的には防犯やプライバシーの保護のため建物の内側に庭をつくり、庭に向かって開口を設けて通風や採光を得るのが常道です。 しかし、下吹越さんはそれに異を唱えます。「外部に向かって閉じ切ってしまったら、この地域に暮らす意味が希薄になってしまう。そこで建物の接道面にスリット(切り込み)を設けてそこを庭とし、接道面の庭とリビングに面した離れを緩やかにつなげました。この庭に植物を植えて、自然を住み手と地域とでシェアするプランです。また、スリットは集音効果が高く、往来する人の会話もはっきりと聞き取れるのは、新たな発見でした。テントに例えたのはそのためです」。
プライバシーに配慮しながら、気配は残す
下吹越さんはプライバシーや防犯にも配慮。往来する人が立ち止まってのぞかなければ室内が見えないように、スリットの幅や壁の角度、植栽を模型を使って綿密に検証しました。 地域の人は2mほどの隙間から離れにいる人の気配を感じたり、夜は漏れ出る光によって在宅を知ることができます。このスリットが都市における住み手と地域の理想的な関係をつくっているのです。