山下智久は”熱い思い”を秘めた役が似合う 『ブルーモーメント』で一段と強まった存在感
SNSでは「『コード・ブルー』の藍沢先生を思い出した」という声も
そして、やっぱり山下は一見クールだけど胸の内に熱い思いを秘めた役が似合う。初回の放送後、SNSで散見されたのは「『コード・ブルー』の藍沢先生を思い出した」という声。救急用のドクターヘリに乗り込むフライトドクターの成長を描く同作で山下が演じた医師の藍沢耕作も、常に冷静沈着。だが、一人でも多くの命を救うという強い使命感を持っていて、ぶっきらぼうに見えるが仲間思い、という知れば知るほど魅力を増す人物だった。こうした役柄が似合うのは、山下自身、器用で何でもそつなくこなしているように見えて、実は裏で人一倍努力している人だからだ。以前、『アナザースカイ』(日本テレビ系)に出演した際にもプライベートでロサンゼルスのアクターズスクールに通い、同時に英語の発音レッスンを受けていたことを明かしていた。今回のドラマでも気象にまつわる難解で膨大なセリフを流暢に、かつ聞き取りやすく発する姿に山下の努力家な一面がのぞく。 それだけ知的でオーラがあったら、普通は近寄りがたい印象を受けそうだが、山下の場合はそうじゃない。制作発表会見で共演者の岡部大(ハナコ)も「サークルの先輩くらい親しみやすい」と明かしていたように、不思議と人を寄せ付ける雰囲気がある。クールな役は十八番とも言えるが、『野ブタ。をプロデュース』や『5→9~私に恋したお坊さん~』(フジテレビ系)ではエキセントリックなキャラクターを乗りこなし、『アルジャーノンに花束を』(TBS系)では知的障害を抱え、手術により天才的な知能を手に入れた青年役に説得力をもたせる演技が高く評価されるなど、もともと役者としての幅が広い山下。中でも、『正直不動産』(NHK総合)での祟りで嘘がつけなくなってしまった元やり手不動産営業マンの永瀬財地に扮した山下のコミカルな演技が印象深い。かっこよくて情けないという相反する魅力を体現できたのは、圧倒的なオーラと親しみやすさが共存する山下だからこそだろう。 今回演じる晴原もSDMを牽引する一方、“ハルカン”として報道番組のお天気コーナーに出演。普段はぶっきらぼうだが、親しみやすいキャラクターとして売り出すことで視聴者の天気にまつわる意識を変えようとしており、山下にぴったりな役柄と言える。そんなハルカンが毎週各話に登場する気象用語を分かりやすくSNSで解説する「ハルカンのお天気用語解説」という企画も話題に。第1回では、ドラマのタイトルにもなっている「ブルーモーメント」の意味が解説された。 ブルーモーメントとは、日の出前と日の入り後の太陽が地平線の下に潜っているときに、わずかな時間だけ目にすることができる、空が群青色に染まる現象のこと。同じように隙がないように見える晴原からは時折、最愛の人を災害で亡くした苦しみや、そのとき味わった悔しさをバネに人命救助に当たる熱き思いが滲む。山下が表現する“ブルーモーメント”を見逃さないようにしたい。
苫とり子