イエメン・フーシ派空爆は中東の緊張を高めるだけ、「ある条件」なしには成功しない理由
攻撃の応酬が加速する
国際規範や国際法は、誰もが遵守する場合に限って有効だ。 アメリカによるイエメンの主権侵害ともいえる今回のケースのように、ある国が違反に踏み切ったとき、最も大きな脅威にさらされる。 その事実を浮き彫りにしたのが、米英による空爆後のイランの反応だ。 フーシ派を重要なパートナーに位置付けるイラン政府は、行動に出る必要があると考えたのか、イラクやシリアにミサイルでの越境攻撃を実施。 イラクへの攻撃は、イスラエル情報機関の拠点が標的だったと主張する。 中東の安定性に与える影響を考えれば不安になる出来事だが、それだけではない。イランは友好国であるパキスタン領内を空爆し、パキスタンによる報復攻撃を招いた。 幸いなことに、攻撃は国家に対するものではなく、互いの国を拠点とするテロ組織が標的だと、両国は強調する。 とはいえパキスタンでは、イムラン・カーン元首相が22年4月に軍部との対立で失職した後、政治的に不安定な状態が続いている。 2月に総選挙を控えるなか、弱腰というイメージを与えるのは軍部にとって論外で、事態がエスカレートする可能性は否めない。 イスラエルのガザ侵攻以来、ほぼ全ての関係者、特にアメリカは紛争の地域的拡大を阻止しようとしてきた。 だが今年に入ってからの出来事は、シリアの首都ダマスカスへのイスラエルの空爆や、親イラン武装組織によるイラクの空軍基地攻撃で駐留米軍兵士が負傷した事件と併せて、この目標の実現を難しくしている。 海上での多国間の取り組みを放棄して空からの攻撃に踏み切ったアメリカと同盟国は、うかつにも避けたかったはずの状況を自らつくり出しているのかもしれない。 James Horncastle, Assistant Professor and Edward and Emily McWhinney Professor in International Relations, Simon Fraser University This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license.