八海醸造「八海山」 ブルックリン・クラと提携を深める真意とは 日本酒の正しい情報を“現地の言葉”で発信
年産最大900㎘、火入れ設備導入
ブルックリン・クラの新蔵は、年間の生産能力が従来比で約10倍の最大900㎘(約5千石)となる。新たに火入れ設備を導入したこともポイント。これまで主力の生酒に加え、より品質の安定した製品を米国内に広く届けられるようになる。 現行の主要商品は「Blue Door Junmai(ブルードア 純米)」や「Number Fourteen Junmai Ginjo(ナンバー14 純米吟醸)」など。ニューヨークの地で、魚沼と同じ軟水を活かしたきれいな酒質を目指して醸されている。他にもSAKEになじみがないアメリカ人向けに、ホップなど副原料を使った飲みやすい限定品も提案する。
輸出は「雪室」熟成酒を核に
清酒「八海山」の輸出は1995年にアメリカ向けでスタート、徐々に拡大してきた。現在は北米を筆頭にアジアでの露出も増えており、26か国・地域に展開する。 主力は高付加価値品だ。とくに自社施設「八海山雪室」の専用タンクで貯蔵した「純米大吟醸 八海山 雪室貯蔵三年」と「純米大吟醸 八海山 雪室熟成八年」が中心的な役割を担う。 「熟成の価値は海外でもアピールしやすい。本来の淡麗さを残しながらなめらかで余韻のある酒質に仕上がっており、肉料理などとも相性が良い。新潟の雪を連想させる真っ白なボトルも特長。輸出の核となる商材に育てていく」(八海山の阿部俊一海外営業課課長)。 なお「純米大吟醸 八海山 雪室貯蔵三年」は昨年4月、男子プロゴルフの松山英樹選手が「マスターズ」のディフェンディングチャンピオンとして、大会前に行われる「チャンピオンズ ディナー」で提供酒に選んだことでも話題になった。 輸出専用で「八海山 特別純米」を展開。ブルーを基調にしたスタイリッシュなデザインは、米国在住のデザイナーが手がけた。バランスのとれたまろやかな味わいで幅広い料理にあわせやすい。 「純米大吟醸 八海山 金剛心 浩和蔵仕込」も海外で存在感がある。同社最高級の一品だが、個性的なボトルが注目を集め、アジアではギフトシーンの利用も多い。 23年8月期の輸出および免税販売はトータルで数量・金額とも前年クリアした。輸出は国・地域によって実績がバラついているが、免税販売はインバウンドの活性化でコロナ禍前の19年度を上回るなど好調だった。