高品質スリッパ製造の後藤(河北)、東大生に事業承継 ネット通販に挑戦
河北町でスリッパを製造し、後継者が不在だった「後藤」(後藤重美社長)が、現役東大生の起業家に事業を引き継ぎ、新たなスタートを切った。後継者が不在だったためM&A(企業の合併・買収)の手法で“跡継ぎ”を探し、事業承継することができた。引き続き生産量日本一を誇る同町で、高品質なスリッパを生産し、インターネットなどを通した販路拡大と、さらなる成長を目指す。 「スリッパの町」で、同社は1957(昭和32)年に創業。技術力の高さを売りにし、職人が全て手作りするオリジナルスリッパも好評だ。価格帯は2千~5千円ほど。全日本空輸に納品しているほか、大手百貨店でも販売されている。 従業員数は25人で、年間10万足以上を製造。売上高は1億円程度を維持してきたが近年は減少傾向に転じ、原材料価格と人件費の高騰によるコスト上昇が経営課題となっていた。後藤社長は67歳で、妻の和子専務も66歳とまだ働き盛り。だが、長男は別の仕事に就き、家業を継がないことから、事業承継を支援している日本M&Aセンター(東京)の仲介で事業の譲渡先を探した。
候補に挙がったのは、東京大工学部4年の石井健椰(たつや)さん(25)=東京都出身=が最高経営責任者(CEO)を務め、マーケティングを起点にした事業承継を目指すTJC(東京)。石井さんは製品を手にし、細かな手縫いなど、後藤の技術力の高さを実感。ネット販売に注力することで、新たな顧客を獲得し、会社も成長できると考え、引き継ぐことを決断した。後藤はTJCに19日付で全株式を譲渡した。譲渡額は非公表。 後藤社長は会長、和子専務は顧問として残り、社長となった石井さんをサポートする。従業員の雇用も継続する。石井さんは「まず直販に注力する。デジタルマーケティングを駆使して知名度を高め、ネット通販にも乗り出す」と語り、後藤社長は「体が動かなくなってからでは遅いと思い、早めに承継を決断して良かった」と述べた。後藤は和子専務の父・故芳雄さんが創業。和子専務は「引き継いでいただき、父も喜んでいると思う」と話した。