阿部寛が13年の時を経ても変わらないハマリ役を演じたドラマ「まだ結婚できない男」
放送と事件が同時進行するリアルタイム型サスペンス・エンターテインメント映画「ショウタイムセブン」が、2025年2月7日(金)に全国公開する。韓国で大ヒットしたソリッドスリラー「テロ, ライブ」を原作にオリジナル展開を盛り込んだ本作の主演は、阿部寛が務める。昨年は日曜劇場「VIVANT」や大河ドラマ「どうする家康」などの話題作に出演し、第16回アジア・フィルム・アワードで優れた才能を持つ映画人に贈られる「Excellence in Asian Cinema Award」も受賞した阿部。1987年の俳優デビューから今も第一線で活躍を続けている。 【写真を見る】悠々自適な生活をおくる桑野(阿部寛) これまで、「TRICK」シリーズ(2000年~)の天才物理学者・上田次郎や、映画「テルマエ・ロマエ」シリーズ(2012、2014年)での古代ローマ帝国浴場設計技師ルシウス、「ドラゴン桜」(2005、2021年)の弁護士・桜木など、個性的なキャラクターも自分のものにしてヒット作を生み出してきた。そんな阿部の当たり役の一つに、「結婚できない男」桑野信介も挙げられるだろう。2006年に放送された本作での偏屈な40歳の独身男も、社会現象まで巻き起こすほど大きな話題となった。そんな人気ドラマの13年ぶりの続編が「まだ結婚できない男」(2019年)だ。 阿部が演じる桑野信介は、腕のいい建築士。ルックスはもちろん収入や社会的地位と全てにおいて人並み以上だが、「メリットがない」という考えから結婚の経験はなく、偏屈で皮肉屋かつプライドが高くこだわりも強い。そのため53歳になった現在も恋人を作ることもなく、気楽なシングルライフを送っていた。ある日、日課のエゴサーチで桑野を非難しているブログを発見し、近所に事務所を構えていた弁護士・吉山まどかに相談する。今作ではこの出来事を皮切りに様々な女性たちと出会い、急激に運命の歯車が回り始める。 令和になっても50歳を過ぎても、桑野のひねくれぶりは健在。独特の細かいこだわりに、皮肉を言ってはあまのじゃくな行動をして、空気も読めない。ステーキやパエリア、流しそうめんに北京ダックまで、自分のために作った料理を食べながらニヤつく表情も相変わらず。自室で趣味のクラシックを聴きながら指揮をする姿も、桑野らしさ全開。歩き方や口調、笑う時の口の形も偏屈そのものだ。いやむしろ13年の月日を経て、さらに拗らせているかもしれない。彼がまだ結婚できない理由がよく分かる。しかしそれでいて、なぜか憎めない。子供のように無邪気な部分や偏屈の裏に優しさも持ち合わせている。絶妙なバランスで阿部がコミカルに好演した。 13年ぶりの復活を遂げた本作。主題歌も前作の「スイミー」から少しアレンジを加えたEvery Little Thingのボーカル・持田香織の「まだスイミー」が起用されるなど、作品に関わる製作陣の愛を感じさせる。引き続き脚本を務める尾崎将也による変わらない世界観の中で、桑野として再び生きる阿部。塚本高史、三浦理恵子、尾美としのり、草笛光子らお馴染みのメンバーも嬉しい。そして吉田羊、深川麻衣、稲森いずみをはじめとする新たな女性キャストたちも華やかに物語を盛り上げる。 今や人生100年時代、桑野たちを取り巻く社会は大きく変化したが、今度こそ人生のパートナーを見つけることができるのか。相変わらずのようで僅かながら成長し、彼自身も変化していく。それが微笑ましく、愛おしく思える。阿部が演じるからこその、愛すべき偏屈男。正統派俳優でありながら、癖の強すぎるキャラクターでも生き生きと輝く。本シリーズでは阿部の魅力が存分に生かされている。 文=中川菜都美
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