【独自】国基準上回るPFAS 今なお検出 岡山・吉備中央 発覚1年、抜本対策が急務
岡山県吉備中央町の円城浄水場(同町上田西)から発がん性が指摘される有機フッ素化合物(PFAS)が検出された問題で、浄水場の水源だった周辺の沢やダムから国の暫定目標値(1リットル当たり50ナノグラム=ナノは10億分の1)を大幅に上回る濃度の検出が続いていることが16日、県への取材で分かった。水道水の安全が根底から揺らぎ、町の不適切な対応も指摘された問題は発覚から17日で丸1年。抜本対策が急務にもかかわらず、汚染の改善は今なお見通せていない。 県は問題が発覚した昨年10月以降、2カ月ごとに4地点(4月から5地点)で水質調査を続けている。過去と比較可能な4地点で今年8月の結果をみると、発生源とされる使用済み活性炭が置かれていた資材置き場(同町上田東)付近の沢は目標値の96倍に当たる4800ナノグラム、下流の河平ダムでも32倍の1600ナノグラムが検出された。 この2地点は調査開始時を上回る。資材置き場にあった使用済み活性炭は既に撤去されているが、県の担当者は「土壌に残ったPFASの溶出が続いているとみられる」と推測する。 町が設置した外部有識者による原因究明委員会は今年9月、使用済み活性炭を発生源と考えることが「妥当」と報告書で結論付けた。資材置き場の土壌を掘削除去し、清浄土壌で埋め戻した後にコンクリートなどで覆う手法が効果的とする汚染対策も示している。
ただ、具体化はしていない。町によると関係者間の調整が続いている状態で、資材置き場を管理する地元財産区が、使用済み活性炭を保管していた企業に対し原状回復をこれから要望していくという。 住民団体「円城浄水場PFAS問題有志の会」の小倉博司代表(71)は「PFASによる汚染を止めることが急を要する課題なのにできていない」と早急な対策を要求。町が近く、全国で初めて公費で実施する住民の血液検査も「検査後の対応が何も決まっていない。今後、結果に不安を抱く住民のケアをどうしていくかを含め町と話し合っていきたい」と話す。 問題を巡っては、町が目標値を超える濃度を検出しながら県に虚偽の報告をしていたことなどが判明。その後、県の調査で浄水場上流部の資材置き場に使用済み活性炭を入れた大型袋「フレコンバッグ」が多数置かれているのが発見された。浄水場の水源は変更している。 町の対応も問われる中で山本雅則町長は「血液検査をはじめ町民の安心につながる取り組みをスピーディーにやっていく。風評被害対策も進めていきたい」とする。