ユーロ圏PMIが予想外に失速、仏選挙リスクが圧迫-製造業低迷
(ブルームバーグ): ユーロ圏民間部門の経済活動は予想外に失速した。フランスの総選挙実施が企業を圧迫し、製造業の活動は今年最悪を記録した。
S&Pグローバルが21日発表した6月のユーロ圏HCOB総合購買担当者指数(PMI)は50.8に低下した。拡大と縮小の境目である50を4カ月連続で上回ったものの、ブルームバーグが調査したエコノミスト予想の52.5を大きく下回った。
欧州経済は昨年の小幅なリセッション(景気後退)からいまだ回復の初期段階にある。1-3月(第1四半期)の成長は予想以上だったが、最近のデータからは勢いを失いつつある可能性が示唆されていた。さらに、マクロン仏大統領が発表した衝撃的な国民議会(下院)解散・総選挙で、域内第2の経済規模を持つフランスの政府が一変する見通しが浮上した。
HCOB(ハンブルク商業銀行)のチーフエコノミスト、サイラス・デラルビア氏は21日の発表文で、「この予想外の展開が将来の経済政策を巡り多大な不透明性を引き起こし、それにより多くの企業が新規投資や注文にブレーキをかけた公算が大きい」と指摘。
「いずれにせよ、フランスの景気低迷がユーロ圏の経済状況悪化に大きく寄与したことは明らかだ」と述べ、ユーロ圏の4-6月(第2四半期)の域内総生産(GDP)は0.2%増となるだろうと予測した。
予想を下回るPMIで、短期金融市場では欧州中央銀行(ECB)とイングランド銀行(英中央銀行)の利下げ見通しが強まった。市場で見込まれる年内のECB利下げ幅は44ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)と、PMI発表前の42bpから拡大。英中銀は年内2回の0.25ポイント利下げが完全に織り込まれた。
英中銀の年内2回利下げ、トレーダーが完全に織り込む
ユーロ圏経済の大きな足かせとなっているのは製造業で、今回のPMIは製造業が立ち直りつつあるとの期待を打ち砕いた。ドイツの製造業PMIは引き続き50を下回り、5月に上げた分の一部を打ち消した。フランスも似たようなトレンドだが、製造業の不振はドイツほど深刻ではない。