松田凌が作り上げる、美しさと強さを秘めた加州清光 「新選組隊士たちの志が根付いている」
「たとえぶつかり合っても自分たちがこれだと思う道に進んでいきたい」
――本公演には、植田圭輔さんが演じる大和守安定も出陣します。加州清光にとって、非常に関係性の深い刀剣男士になりますが、植田さん、そして大和守安定についてどのような思いがありますか? 初めて出陣させていただいた「天伝 蒼空の兵 -大坂冬の陣-」のときに、加州清光として「あいつが」という気を持たせるセリフがあったのですが、僕自身も「いつか、いつか」と願っていたので、その願いを叶えていただいてありがたいです。まさに念願が叶ったという形です。 ――これからの稽古を通して加州清光と大和守安定の関係性もさらに深まっていきそうですね。 そうですね。植田くんもおっしゃっていましたが、ぶつかってもいいと思っています。揉めたいわけでもけんかしたいわけでもないけれど、信頼しているからこそ、きちんと向き合えると思います。それは植田くんだけでなく、今回はそれくらい作品に向き合う人たちが集まったと思っています。なので、いろいろな可能性にチャレンジして、例えぶつかり合っても自分たちがこれだと思う道に進んでいきたいと思っています。
「これが僕たちなりの王道」だと言えるように突き進みたい
――今回は座長として公演に挑むことになりますが、どんなカンパニーを作っていきたいですか? これまでも本当にありがたいことに座長という経験を幾度かさせていただいてきましたが、最近、向いていないなと気づきました。もちろんこれまでも、真ん中に立つことで僕の人生が変わったという経験ばかりでしたし、求めている場所の一つではあるのですが、僕自身は、一つの作品に取り組む俳優として、身も心もそこに投じてしまうタイプですし、どちらかというと賭け事をしているような危うさがあると思います。そうして役に臨んでいるからこそ、加州清光を演じるにあたって自分なりの魅力を出せているのかもしれませんが、そういう意味ではあまり向いていないのかなと。 とはいえ、今回は皆さまに甘えつつ、末満さんを筆頭に座組みの皆さんたちと王道に立ち返るということを念頭に置きたいと思っています。僕たちなりに進むとそれは「邪の道」になるのかもしれませんが、「これが僕たちなりの王道」だと言えるように突き進みたいと思っています。 ――今作のサブタイトルに「走馬灯」という言葉がありますが、もし、松田さんが人生の終わりに走馬灯を見るとしたら、どんな光景を見たいですか? どうだろう…パッと思いつくのは「人」ですかね。僕は一人では生きられないと思っています。僕は自分よがりで、自分のことには自分で責任を持って過ごしていきたいタイプで、自分に焦点を当てた人生を歩んでいるくせに、人に助けてもらっているばかりの人生で…。なので、亡くなった祖父をはじめ、家族、そして親友の俳優、自分がぶつかってしまった人…という人たちの顔ばかり浮かびそうです。鏡を見るのも好きではないくらい自分のことを見ることはないですが、今、思い起こしても周りの人たちの顔はたくさん出てきます。きっと人との思い出、誰かと過ごした時間だけで僕の走馬灯は終わると思います。人との出会いや繋がりは僕の人生にとっての財産で、それこそが僕の人生なんだと感じています。 ――それは良いことだけでなく、ネガティブなことも含めて? そうですね。悪いこともあってこその人生だと思うので。良いことばかりが続く人生なんて信じられないと思ってしまうんですよ。例え嫌なことがあったとしても、これはこれで自分の人生。ただ、人に迷惑はかけずに、より自分の人生が彩られていったらいいなと思っています。今回、サブタイトルに「心伝」とありますが、この作品が皆さまの心にも彩りや面白みといったものを、少しでももたらすことができるように作り上げていきたいと思います。 取材・文:嶋田真己