新型コロナ禍が落ち着き始めたこの夏、海外研修を経験する高校生が増えてきた。ただ、県内から赴く生徒の数はまだ少ない。世界から注目される「福島」となった今、本県復興のために地球規模の視点を持つ人材の育成は急務だ。国や県、市町村もさまざまなプログラムを計画、実行し始めているが、費用面での個人負担は大きい。福島を担う子どもの成長こそ未来への最大の投資だ。民間の力が必要となっている。 　県教委は、第７次総合教育計画の取り組み「創造性あふれる人材の育成」につながる事業として「グローバル人材育成事業」に力を入れる。国内外の人々と対話・協働して新たな技術や方法、価値を創造していく教育だ。実現には諸外国の人や価値観に実際に触れる必要がある。国は既に同様の事業として、高校生対象の官民協働海外留学支援制度「日本代表プログラム」を２０１３年に設けた。近年は毎年７００人規模の高校生の海外留学を応援し、今年は７１６人が選出され海外に飛び立つ。しかし、本県からの参加者は５人に過ぎない。

　個人負担の問題もあるが、それ以上に県内の高校生を含む関係者の意識が醸成されていないことが課題だ。そこで、県教委は秋にも経済団体や教育、国際交流関係団体などを巻き込んだ地域協議会（コンソーシアム）を立ち上げる。人材育成基金への寄付を募り、毎年５０人規模の短期留学（２週間～４カ月）を実施したい考えだ。 　昨年、福島市出身で英国ユニバーシティー・カレッジ・ロンドン（ＵＣＬ）教授の大沼信一氏を中心に行われた研修企画は民間の力がなければできなかった。世界規模の名門大学ＵＣＬの夏季スクールに本県の高校生３人が参加し世界の高校生と交流・探求する。趣旨に賛同した企業、個人の寄付で実現に至った。内容の充実度と関係者の努力もあり、今年は県の事業として実施されることとなった。 　多感な高校生時代に海外研修を経験する意義は大きい。だが、本県は他県に大きく後れを取っている。海外研修事業にはしっかりとした資金基盤が必要だ。公だけでなく民間も大いに意識してほしい。未来を担う高校生への投資は本県復興への力強い後押しになるはずだ。（関根英樹）