【舛添直言】「解散総選挙」の大勝負に出たマクロン、それでも極右の勢いはとまらない
■ 起死回生を狙った議会解散、株価は暴落 フランスでは、極右の国民連合(RN)が31.4%の票を獲得し、マクロン大統領の与党連合14.6%の倍以上となった。極右の作家、エリック・ゼムールが率いる右翼政党「再征服」の票も合わせると、約4割が極右票ということになる。 この結果に、フランスでは大きな衝撃が走り、マクロン大統領は、国民議会を解散する決定を下した。6月30日が第1回投票、7月7日が決選投票である。 この突然の解散決定に、フランスの株価は大きく下落した。 ■ イメチェンに成功した極右政党 RN躍進の理由は、他のヨーロッパ諸国の極右政党も同じであるが、政党のイメージ・チェンジである。 政策的には排外主義的な過激な主張を引っ込め、穏健路線へと舵を切っている。たとえばEU離脱論は取り下げている。 この党は1972年にジャン=マリー・ルペンが、国民戦線(FN)という名で創立したが、その極右路線はフランス国民には受け入れられなかった。私はフランスに留学し、現在に至るまでフランスとは緊密な関係を保っている。 私もこの右翼政党の国会議員の友人がいたが、大きなパーティーなどの会合で彼らと談笑していると、周りの人々がその輪から去って行った。外国人排斥をうたうその主張が、自由・平等・博愛のフランス共和制の理想とは相反すると考えられたからである。ところが、今では若者が寄ってくる。まさに隔世の感がする。
■ 危険な賭け 2011年1月には、三女のマリーヌ・ルペンが第2代党首に就任し、党勢を拡大していった。2017年5月の大統領選挙では、第一回投票で、マリーヌ・ルペンがトップに躍り出たが、決選投票でマクロンに敗れた。極右を嫌う左翼が中道のマクロンに投票したからである。2022年5月の大統領選挙でも、決選投票では、負けたものの41.5%の票を獲得した。 この党勢拡大の勢いが今も続いているのである。2022年11月には、ジョルダン・バルデラが第3代党首に選出された。彼はイタリア移民の子であり、28歳の若さを誇る。 今回の欧州議会選挙では、バルデラはRNの変貌を象徴するイメージの演出に成功した。フランスでは、国民議会の選挙で過半数を得た勢力のトップが首相になるが、もしRNが勝てば、マクロン大統領・バルデラ首相というコアビタシオン(共存)政権となる。 今のRNの勢いが3週間後に減退するとは考えられない。国民議会の第一党になる可能性は十分あるのである。そこで、解散総選挙というマクロン大統領の決定は、危険を伴う大きな賭けだとみられている。