新生GAG結成までの3人の思い「20年福井とやってきた以上、今後もやることは一緒」
今の大宮は「一番のポップ期」
──ではここから、お三方に改めて現在の「大宮」のことを聞かせてもらいたいのですが。 福井 大宮というのは、劇場のことですか? それとも概念的な大宮のことですか? ──両方聞きたいです。まずは大宮の劇場のことから。支配人が4代目になった現在の劇場はどんな状況ですか? 福井 やっぱり10年も経つとすごく変わるんだなと思います。前支配人までは、大宮がスタートしたころの色が濃く残っていましたけど、今の大宮の劇場は、いい意味でそういう色をなくしていってる。新しい劇場になっていっているなという感覚ですね。 SJ 大宮の歴史の中で、一番のポップ期。ルミネ(theよしもと)や無限大(ヨシモト∞ホール)に近づいていってる感じかな。 福井 コンプライアンスも厳しくなっているなか、大宮セブンメンバーが次々中央(東京)のテレビでお笑いタレントとして活躍しているので、その人たちの経歴に傷がつく可能性を限りなく低くしていってる、ということだと思います。 ──たしかに大宮のライブにフレッシュな顔ぶれが増えている印象はありつつ、これまでの大宮の流れを汲むライブもまだまだ残っているようにも思いますが……。 福井 その「今までの大宮」を感じるようなライブを企画されているのが、現在唯一、大宮初期の方々とつながりのあるT氏という方なんですよね。だからT氏のライブでは、たとえば(タモンズ)安部(浩章)ちゃんと(ジェラードン)のアタック西本氏による泥仕合が残っていたりする。最初から今に至るまで、ウケているわけでもないのに。 ファニー 僕はピンになってからぐっと劇場出番が減ったので、あまり状況を把握しきれていない部分はありますが、やはりT氏のライブでは、何をやっても袖でT氏が見守って、笑ってくれている印象が強いですね。 福井 お客さんがシーンとしているのに、袖からT氏の笑い声だけが聞こえるという異常事態。でも僕らもそれがもう普通になってるんですよね。 SJ ただ、そういうT氏のライブがあるからポップカルチャーが生まれた面もあって。無限大や神保町(よしもと漫才劇場)で人気のある若手の方たちは、本来、大宮なんて出なくてもいいんです。それでも来てくれるのは、T氏のカルチャーを知っているからだと僕は思うんですよ。T氏が受け継いでいるものと、新たなポップなもの、お互いの関係があって今の大宮が成立しているんだなと思いますね。 ──続いて、概念の大宮の方について聞かせてください。大宮のメンバーが集中して幕張に出ていた時期があり、それが有楽町(よしもと有楽町シアター)に移り、しばらく空白があったあと、突如、曙橋(配信部屋「曙橋ハウス」)という場所が誕生しましたが。 SJ 今の大宮(という概念)は完全にあそこです。 福井 いわゆる「一座」でやる場所がなくなり、ななまがりなんかは仕事が増えて外で活躍をしていて。その中で一座の核……というと褒めすぎですね、一座のために命を投げ出してもなんでもやりますという鉄砲玉、つまり兵隊が誰なのかが曙橋によってクリアになりました。それが、ファニー、井下大活躍、ますかた一真です。 ファニー 先日も曙橋からの配信ライブがあって、その3人でオープニングをやらせてもらったんです。無料配信だったので、けっこういろんな方が観てくださった結果、チャットが荒れまして。プロデューサーX氏から注意されました。 福井 この3人は劇場に出ていないから、時代の移り変わりに気づいていないんですよね。 ファニー 外に世界があると知らずに育ってますので、いつもの感じでやってしまったらチャット欄に「おもしろくない」としっかり書いていただきまして、反省しました。 SJ びっくりしますよ、時代錯誤のことをやっていて(笑)。 福井 ただ、営業妨害になってしまうかもしれませんけど、囲碁将棋さんももともとはそこの人です。 SJ (大宮セブンは)全員そうでしょ(笑)。 福井 まあ、そういう人が時代に合わせて、そこをうまく隠して外と接していたのに、兵隊だけは隠さずやっちゃうんですよね。僕は、それはよくないけどいいな、という建前と本音がある感じですかね。 GAG SJ(えすじぇい/1983年6月7日生まれ、広島県出身/写真左)、福井俊太郎(ふくい・しゅんたろう/1980年8月18日生まれ、兵庫県出身/写真中央)、安田ファニー(やすだふぁにー/1983年10月25日生まれ、大阪府出身/写真右)によるトリオ。2006年3月結成、2024年3月末にひろゆきが脱退し、6月22日より安田ファニーが加入。「大宮セブン」には結成当初より所属。2017年から4年連続で『キングオブコント』決勝進出
文=釣木文恵 撮影=長野竜成 編集=梅山織愛