城氏語る「賛否ある西野監督の賭けはW杯ゆえの根拠ある決断。賛同したい」
西野監督は、この試合に6人の先発メンバーを代え、2トップの「4-4-2」の布陣で臨んだ。主力の疲労の蓄積を考え決勝トーナメントを見据えたプランだったと思う。 だが、この試合に限っては、ワールドカップに初めて出場するメンバーの連動は機能しなかった。宇佐美も武藤も個のパフォーマンスは見せたが、組織的な連携に欠けた。乾、大迫に比べると物足りない。立ち上がりは、いいペースで入って、ポーランドは、両サイドを高いポジションに上げながらもプレッシャーがなく、楽にボールを回せたにもかかわらずチャンスを生かしきれなかった。バラバラだった、との印象が強く残った。 柴崎も前の2試合よりも、やや下がり気味のポジショニングだったように思う。何本か効果的なパスを送ったが、距離感が遠くタイミングが合わなかった。 後半14分の失点シーンも日本の永遠の課題であるセットプレーからだった。FKから飛び出したヤン・ベドナルクにマークを外され完全にフリーにしてしまっていた。 世界のメディアから批判を受けていたGKの川島に西野監督は、キャプテンマークを巻かせて3戦目のピッチへ送り出した。責任感と信頼を与えることで、川島のメンタルをうまくコントロールした。川島は2度のファインセーブを見せて、その期待に応えた。残り11分間のゲームコントロールと、6人の選手交代が、西野監督の冷静な分析に基づく采配だったとすれば、この川島の起用は西野監督の男気を感じさせる感情の采配だった。 日本は南アフリカ大会以来、3度目となるベスト16進出を決めた。後半から大迫、乾、長谷部の3人を投入したが、主力にある程度の休養を与えることができたことは決勝トーナメントの初戦につながるだろう。グループHを2位で通過した日本の相手は、イングランドを1-0で下したグループG首位のベルギーとなった。 今大会の優勝候補に挙がるタレントの揃った強豪である。多くの時間帯で攻め込まれる展開になるだろう。常に数的有利を保ちながら、日本らしい組織的な守備から、いかにワンチャンスで、攻撃に切り替えられるか。その切り替えの速さがポイントになると見る。乗り越えるのが困難な高い壁であることは間違いない。しかし、世界を驚かせる大きなチャンスがそこにある。 (文責・城彰二/元日本代表FW)