交流戦苦しんだ阪神、勝率5割からが指揮官の腕の見せどころ 野球がぜんぶ教えてくれた 田尾安志
阪神は18日にセ・パ交流戦の最終戦を迎え、2年連続の負け越しに終わった。最大7つあった貯金が6日の楽天戦でいったんゼロになった際、岡田彰布監督は翌日のミーティングで「(きょうから)開幕やから」と仕切り直しを強調したという。その日から、パ最下位で調子が上がらない西武戦で3連勝できたことは、阪神側から見ればツキがあったといえる。 得点が2点以下の試合が多く、なかなか復調の兆しが出ない打線も、追加点を取れる場面が見られるようになった。先発投手は、才木浩人が柱のような存在になってくれたことも、一つの安心材料になったことだろう。 今季は球団初のリーグ連覇を目指し、岡田監督が選手に求めたのは個々の成績の向上だった。ただ、負傷ではなく不振によって昨季のベストオーダーが組めない状態が続く。監督にとっても、計算外だったのではないか。 気になったのは、昨季全試合で4番を任せた大山悠輔の2軍降格を決めたときのことだ。岡田監督は本人と話し合った末に決断したことを明かし、報道陣には「本人が相当、自信をなくしているから。どう打ったらええか分からんって言うんやから。体の切れがないやろ」と説明した。 これは外に向けて語る必要はなかったと思っている。監督としては「調子が悪く、一度、下で調整させる」という一言だけでよかったのではないか。「本人が言うてきたんや」との説明もあったようだが、僕には、これが言い訳に聞こえてしまったのだ。 昨季は序盤に大きな貯金ができ「ゆとり」の中での采配だった。選手をいろいろ試すこともでき、休養を取らせることもできる、余裕のある戦いだった。 選手やチームが絶好調のときは、えてして、うまくいくものである。そうではないときこそ、どう乗り切るのか。そこが、監督の裁量だと考えている。 監督として一番の醍醐味(だいごみ)を感じるのが、勝率5割のチームというのが僕の持論だ。采配一つで勝負の行方が大きく変わるからだ。打てない、苦しいときこそ、腕の見せどころ。つまりは、監督として一番楽しいところだ。幸いにも、セ・リーグは抜きんでているチームはない。まさに、真の力を見せるときである。今季は岡田監督の「本領発揮」のシーズンになるといえるのではないだろうか。(野球評論家)