鹿児島の自治体 分散備蓄の道探る 災害時の孤立を想定、自主防衛組織との連携も不可欠
能登半島地震では道路が寸断され、非常食を含めた物資の提供が著しく遅れた。鹿児島県内の自治体は災害時の孤立を想定し、地区ごとの分散備蓄を模索する。ただ保管場所や費用の問題がのしかかる。公的支援に加え、自治会などでの備えの必要性も高まっている。 【写真】非常食や自家発電機など備蓄品が並ぶ収納スペース=姶良市の松原地区公民館
姶良市の指定避難所の一つ、松原地区公民館。1階の収納スペースには約90食分の非常食や自家発電機、紙おむつなどが並ぶ。段ボールベッドやパーティションを収める屋外倉庫もある。 同市は、備蓄品が行き渡るようにと非常食約3000食分などを約20カ所に分散して保管する。ただ指定避難所は65カ所あり、危機管理課の堂森涼太主事(31)は「保管スペースを確保できないことや管理の問題から、全ての避難所に置くのは難しい」と説明する。 主に役場で保管する南大隅町。総務課の瀬嵜博明係長は分散備蓄に加え、在宅避難者への支援の必要もあるとし「物資を届けるには民生委員らと連携し、住民の所在把握も欠かせない」と課題を挙げる。 国は東日本大震災などの教訓を踏まえ、最低3日分の備蓄を推奨している。 曽於市は南海トラフ巨大地震の避難者数を最大約2300人と想定。非常食の目標を3日分の約2万食とし、現在は約1万1500食を備える。総務課の谷川英穂危機管理室長(48)は「財政上の制約もあり、少しずつ増やしていくしかない」と話す。
同市は2021年度に自主防災組織の協議会を立ち上げ、家庭や地域での備蓄促進を呼びかける。笠木校区自主防災組織では23年9月、市の補助金を活用し備蓄倉庫を新設した。永山洋一会長(67)は「能登の地震を通し、大規模災害時は公的な援助が追いつかないと痛感した。行政だけに頼るわけにはいかない」と気を引き締める。 16年の熊本地震で震度7を2度観測した熊本県益城町は、学校など約40カ所に防災倉庫を新設。鍵は区長らに預け、災害時に開けてもらう。同町役場の担当者は「災害直後を乗り切るには事前の備えと住民との連携が欠かせない」と訴えた。 ■鹿児島県は物流業者とラストマイル対策 大規模災害時に全国の被災地では、物資拠点から避難所までの区間で搬送が滞るラストマイル(最後の距離)問題が繰り返されてきた。能登半島地震でも課題が浮き彫りとなった。鹿児島県は運搬などを担う民間業者と連携し、受け入れ態勢の整備を進める。
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