ロックバンドの存在意義を示した「ツタロックDIG Vol.14 OSAKA」現地レポ
ピースフルな空間を作ったトンボコープ、ありのままを見せたアルステイク、決意のトリを見せたムンドロ
7組目はトンボコープ。 近未来を感じさせるようなエレクトロなSEで登場した4人は「ストーリーモンスター」からスタート。素人目にもすぐ分かるテクニックの高さとキャッチーさの共存。Bメロでの「声を聞かせてくれ!」という雪村(Vo.Gt)の声かけでしっかりシンガロングが起こる。そらサンダー(Gt)のギタープレイの熱も後ろまで届き、でかそ(Ba)と林(Dr)のリズム隊の重みのある高速ビートも、さらにそこに拍車をかける。「トンボコープです、どうぞよろしく! まだまだやろうぜ!」と言って続けたのは「過呼吸愛」。中毒性のある語感のリズムと演奏の飽きさせない展開によって、細胞レベルでこの音楽が体内に入ってきていることが分かる。自分の音楽を楽しむツボを、いつの間にか解析されていた気分だ。 「今日は見に来てくれてありがとう!」とMCを始めると、初BIGCATの感想を話し始める。でかそは「映画館みたいですね。広いステージって隠れて(最前の端の方が)お客さん見えなかったりするんですけど、全部見えていいっすね……いいっすね~!」とまったり話す。雪村も「今日はドラムの龍之介からもらった長袖で来ちゃったんですけど、めちゃくちゃ暑いです。でも頑張ります」と話す。雪村は「3月、幕張でのツタロックフェスに出た時にもらったイベントTシャツも日常生活で着ています」とのこと。ツタロック愛、多めです。 「最高の音楽をやって帰ります!」と言って始まったのは「独裁者」。始まった途端に力強いドラムとフロアのクラップが融合し、サビでは自然とフロアが横に手を振り「最高の景色だ!」と楽しそうに伝える。レインボーでカラフルな照明も彼らとこの楽曲を映えさせる。そしてそこからハイテンションのロックチューン、「風の噂」がスタート。個人的にも彼らの魅力を全部詰め込んだような楽曲だと思っているが、フロアもここまでライブでしてきた様々なリズムのクラップ、拳、ジャンプ、シンガロングといった反応を全て引き出されていて、それは<世界で一番幸せ者にするからさ>という歌詞通りであることを証明していた。 続くMCでは、定番となっているでかそピースの時間。せーのと言ったら全員でピースを掲げながら「イエーイ!」というこれ。しっかりピースフルな空間を作る。その後もたこ焼きを80個買って車内に落としてしまった話などをまったり話す。そんなリラックスもしながら最後雪村は「BIGCAT憧れていたので出られたことが嬉しいですし、この後も最高なバンドが出てくるので、最後まで楽しんでください! トンボコープでした!」と話して、「Now is the best!!!」を投下。彼らを知らしめた楽曲でもあるこの曲でのクラップの一体感はさすが。そして最後は雪村がギターを置き「皆で歌える曲持ってきました」と「喜怒哀楽」を演奏。ゆったりとしたドラムの”ドン・ドン・ダン”のリズムに合わせた手拍子のリズムからは曲名通りあらゆる1人1人の感情が零れ落ちていくのが分かる。終始何百人ものあらゆる感情をピースフルに受け止めた彼ら。それを可能とする曲は、非常に強固で、器の大きさも尋常ではない。大型ロックフェス出演も増えているが、もう何万人と受け止める準備はできている。 8組目は岡山からアルステイク。 板付で始まった彼らはまずゆっくりとひだか(Vo.Gt)がギターを弾きながら「ワガママ」を演奏し始める。優しくも力強く鳴らされるこの楽曲は、どちらかと言えばうっとり聴いていた自分がいたのだが、アウトロが徐々に大きくなっていき、ひだかは「岡山! アルステイク! ライブやりに来ました! よろしくお願いします!」とボルテージが上がっていき「嘘つきは勝手」を開始。のん(Ba.Cho)のステージを駆け回る躍動感、あむ(Dr.Cho)の演奏とコーラスも力強さを増していく。「思い出も生傷もカサブタも全部見せて帰ってください。よろしく!」と告げて始まった3曲目は「裸足と裸足」。フロアに言った通り、ステージ上の3人も人生全部を乗せて、楽器を通して、本気で音にして、表現していく様が伝わる。 MCでひだかは「俺らのこと初めて見る人もいると思うし、全く曲を知らない人もいると思うんですけど、ライブハウスって初めましてで顔も知らないのに、名前も知らないのに、心の中にスッて入ってきちゃう音楽がいっぱいある。それがライブハウスだと思っているんで。知ってても知らなくても、言葉に、メロディに、耳を澄まして、いろいろ思い出してください。最後までよろしくお願いします」と話す。そして「大阪に何回も来てた時の歌」と「(終わりの続き)」を披露。ゆらゆらとした恋心を歌い、クライマックスでは青の照明をバックにひだかとのんが背中合わせになるシーンは感動的だった。 再びMCに入りツタロックへの感謝を伝えた後、過去3回のBIGCATでのツタロックで今回が一番動員が多いことを話し、フロアにも感謝を伝えると会場から拍手。そして「今日いろんなバンドがいたと思うけど、ツタロック”ライブ”なんで! 初めてのBIGCATであなたの目の前でしっかりしっかりロックバンドやって帰ります。よろしくお願いします!」と告げると、ここから20分は攻撃力が一層高い時間に。「ロックに騙されていることに気が付かないほど信じてる」「未完成のまま」「わんちゃん」と続け、ひだかも「一番熱い時間に!」「今日はっちゃけないでどうすんの⁉︎」とありのままの熱量を見せる。まだ中盤戦なのにあむはスティック放り投げるし、8曲目「チェリーメリー」では、ステージを所狭しと駆け回っていたのんがいよいよフロアに降りてきた。そして遂にMCで「今日は大人しめの人多いですよね」と言われたフロアからもダイブが出始める。「作品から商品に成り下がるバンドいる中、俺らのライブはどう見える⁉︎」という問いもあったが、まぁ正直この熱量をどう書き表せればいいのか悩んでいる私がいるのが答えだろう。「ダメ彼氏」も投下した後、「疲れてないですか?」と聞くと今日一番野太い声が上がり、これまでの様相とはやはり変わっていることが分かる。そこから「走れ」「踊れ」と駆け抜けていく中で、ひだかは1人フロアに降りてギターを掻き鳴らして会場と歌うフロアライブ状態になる場面にも。最後は「ライブハウスじゃない時もいつか笑えますように」という言葉から優しい歌「心」を情感たっぷりに演奏。ロックバンドとしてのパスをトリのmoon dropに繋げた。 そしてトリはmoon drop。 「サヨナラCOLOR」のアコギの優しいSEで登場し、浜口は息をスーッと吸って「ヒメゴト」を歌い始める。どこを切り取っても泣きメロとなる極上のバラードを鳴らす姿は神々しささえ感じるが、優しく寄り添ってくれる気の良いお兄ちゃん達とも感じる。ここまでの8バンドを見たフロアも沢山の感情を放出し、少しハイになった状態とも思うが、そういうのもまとめて包み込んでくれた。 そして「ツタロックの皆さん! 俺たちは準備万端なんですけど遊べますかー!」と問いかけると大歓声。そして「踊ろうぜ!」という言葉で始まったのはアップテンポのナンバー「ラストラブレター」。この日最後と分かってるフロアも思い思いの手拍子を鳴らして呼応する。清水(Gt)も前に出てギターソロを見せ、坂(Ba.cho)もステージを裸足で駆け回り、原(Dr)のドラムの音も実に瑞々しい。 「大阪最高です。ありがとうございます!」と浜口が叫んだ後にフロア全員のお手を拝借して始まったのは「どうにもならんわ」。”パンパパン”のクラップのリズムから「いくよ!」の合図で拳も高々と上がる。「恋してる⁉︎」と問いかけていたが、多分それは今だろう。続けて浜口がギターを持ち替えて始まったのは「夏を迎えに来た」という新曲「閃光花火」。ソリッドなギターサウンドが非常にクール、浜口の歌唱も胸に迫ってくるものがある。曲終盤には圧巻のシンガロングが巻き起こるパートがあり「最高の声でした!」と浜口も感謝する。 MCでは「この時間まで残ってくれてありがとうございます!」と感謝する。ツタロックのイベントには多数出演していることと、トリを任せられたことへの感謝も忘れず同時に「ここまで繋いでくれたバンドがいっぱいいるわけですよ。だから任されたこのステージ、中途半端なライブはできん! だからもう一度言わせてくれ。俺らがmoon dropです! よろしくお願いします!」と決意表明し「しっかり焼き付けろよ!」と「君に捧ぐ」を始める。歌と演奏だけでなく「ありがとう、見えてるよ!」「泣くな笑え笑え!」「生き辛いならまたここに帰って来い!」という言葉でもBIGCATに天井知らずの愛を積み上げる。 そして「最高に幸せだったんですけど、皆はどうですか! また会おうな!」という言葉からラストの「水色とセーラー服」を投下し、感動のフィナーレとなった。 その後、アンコールに応え登場した4人。フロアに向かって問いかける時間があり「今日初めてライブハウスに来た人?」と問いかけるとチラホラと手が上がる。その第1歩に感謝し「好きなバンドや好きな曲に救われてここにいると思うけど、そこに今日が含まれますように!」と「ex.ガールフレンド」を演奏。<君の歌を歌ってるんだよ>という歌詞があるが、恐らくフロアにいる1人1人がそんな曲を発掘できたのではないだろうか。そして最後に「『ツタロックDIG OSAKA』、これにて終了です!」と浜口が叫び、大団円となった。 とにかく全てのバンドがフロアに真正面からぶつかっていったのが印象的だったこの日。moon drop以外憧れの初BIGCATというラインナップだったが、呑まれることなく、果てのないスケール感に将来性を感じずにはいられない。これからロックバンドというものの存在意義を間違いなく加速度的に大きくしてくれる9組。でも普段は小さなライブハウスにいる9組。ぜひ気になった方はこれからもライブを見に行って、心と心のコミュニケーションを深めてほしい。 Text by 遊津場 Fish and Lips セットリスト 1. HERO 2. 会いたくなったら 3. 青春ロックを歌って berry meet セットリスト 1. 煌めき 2. 純情 3. 月が綺麗だって 4. 幸福論 5. 溺愛 6. 図星 TRACK15 セットリスト 1. プラネタリウム 2. シティーライト、今夜 3. 話したいこと 4. 私的幸福論 5. 青い夏 606号室 セットリスト 1. 君のことは 2. いつだって青春 3. 抱きしめてやる 4. 静寂の夜 5. 明日になれば 6. スーパーヒーロー 7. 未恋 8. 抱きしめてやる レトロマイガール!! セットリスト 1. 君と夕焼け 2. 映画で会いましょう 3. 夏が過ぎて 4. 24時 5. 落陽 6. グッドバイマイタウン 7. バンジー! ガラクタ セットリスト 1. どこか 2. 一生片想い 3. 1分1秒 4. ラブレター 5. 相変わらず、愛変わらず 6. UFO 7. アイラブユーが足りないの 8. デートしよ! 9. 貴方依存症 10. 1分1秒 トンボコープ セットリスト 1. ストーリーモンスター 2. 過呼吸愛 3. 独裁者 4. 風の噂 5. Now is the best!!! 6. 喜怒哀楽 アルステイク セットリスト 1. ワガママ 2. 嘘つきは勝手 3. 裸足と裸足 4. (終わりの続き) 5. ロックに騙されていることに気が付かないほど信じてる 6. 未完成のまま 7. わんちゃん 8. チェリーメリー 9. ダメ彼氏 10. 走れ 11. 踊れ 12. 心 moon dropセットリスト 1. ヒメゴト 2. ラストラブレター 3. どうにもならんわ 4. 閃光花火 5. 君に捧ぐ 6. 水色とセーラー服 En.ex.ガールフレンド
yutsuba