10名の逮捕者が出るも、なぜか「手配師」は釈放…赤坂・溜池のアパホテル地面師事件の意外な展開
今Netflixで話題の「地面師」...地主一家全員の死も珍しくなかった終戦直後、土地所有者になりすまし土地を売る彼らは、書類が焼失し役人の数も圧倒的に足りない主要都市を舞台に暗躍し始めた。そして80年がたった今では、さらに洗練された手口で次々と犯行を重ね、警察組織や不動産業界を翻弄している。 【漫画】「しすぎたらバカになるぞ」…性的虐待を受けた女性の「すべてが壊れた日」 そのNetflix「地面師たち」の主要な参考文献となったのが、ノンフィクション作家・森功氏の著書『地面師』だ。小説とは違う、すべて本当にあった話で構成されるノンフィクションだけに、その内容はリアルで緊張感に満ちている。 同書より、時にドラマより恐ろしい、本物の地面師たちの最新手口をお届けしよう。 『地面師』連載第52回 『《アパホテル地面師事件》“100億”の資金を動かし暴力団との関係も噂された「大物地上げ屋」が“真相”を語る』より続く
釈放された手配師
なにより白根の経営する不動産会社「クレオス」がアパの交渉窓口である。土地代金12億6000万円の振込先もクレオスだった。それもあり、いったん民事上の損害賠償請求に応じて難を逃れたかに見えた白根だが、17年11月になって改めて逮捕された。 〈「アパ」12億円被害……「地面師」男女9人逮捕〉 17年11月9日付の読売新聞ウェブ版は、こう報じている。 〈ホテルチェーン大手「アパグループ」の関連会社「アパ」(金沢市)との土地取引を巡り、登記手続きに偽造書類を提出したとして、警視庁は8日、東京都目黒区、司法書士亀野裕之容疑者(53)ら男女9人を偽造有印公文書行使などの容疑で逮捕した。このほか男1人についても同容疑などで逮捕状を取り、行方を追っている〉
検挙後の思わぬ展開
逮捕者は10人、このなかには宮田や亀野のほか、秋葉や白根も入っている。さらに11月29日付毎日新聞朝刊では、 〈地面師9人再逮捕へ アパ被害、12億円詐取容疑〉と再逮捕をこう報じた。 〈捜査関係者によると、宮田容疑者らは2013年8月、港区赤坂2の土地(約378平方メートル)の所有者の相続人になり済まして、アパグループの関連会社「アパ」(金沢市)と売買契約を結び、購入代金約12億6000万円をだまし取った疑いが持たれている。契約後の登記申請の審査で、印鑑証明書などが偽造されていたことが発覚。アパは土地を取得できなかった〉 警視庁が彼ら10人を逮捕したのが、17年11月8日から29日にかけてのことだ。ここにはなりすまし役の松本と西川がまだ入っておらず、捜査2課は最終的に12人を検挙した。 ところが、事件はここから意外な展開を見せる。白根とともに、なりすましの手配師と見られた秋葉などは不起訴処分になり、釈放されるのである。いったいどういうことか。 『「高校教師」から“アパホテル地面師事件”の「なりすまし役」へ...80超えの老人が地面師グループと繋がりをもった「やくざ風の男たちが集う」巣鴨の穴場』へ続く
森 功(ジャーナリスト)
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