長野県が防災ヘリを当面民間委託へ 墜落事故で救難は非常態勢に
1機だけ所有していた消防防災ヘリコプターの墜落事故を受けて長野県は10日、消防・救難のヘリ運航を当面、民間に委託する方針を明らかにしました。ヘリ運航の再建まで長期間を要するための緊急措置。同時にヘリ運航を現行通り県の直営とするか恒久的に民間委託とするかも検討します。長期的な課題を抱える一方で今春、夏以降の頻発する遭難救助、山火事対策も迫っており、近隣自治体や国の支援に頼る非常態勢を迎えることになりました。 【写真】防災ヘリ墜落、長野県の救難体制に打撃 多くの隊員とヘリ失う
県警ヘリ、ドクターヘリ、他県との連携
この日開いた県議会の危機管理委員会で、県の野池明登・危機管理部長は「今後のヘリコプターによる消防防災活動については、目的に応じ県警のヘリ、県のドクターヘリ、ほかの都道府県の消防防災ヘリ、自衛隊のヘリなどの協力を求めて対応したい」としました。 ほかの自治体のヘリ出動は富山など隣接県と長野県との相互応援協定に基づくもので、県は「新たに愛知県、埼玉県、東京都と協定締結に向け協議中」と表明。大規模な災害などの際は長野県の要請により消防庁による「広域航空消防応援」を発動、同庁の決定で近くの自治体が応援出動するとしました。 長野県にそれぞれ2機ある県警ヘリとドクターヘリの活動で手が回らない場合に、他自治体の応援を求めるケースとして県は、▽救急搬送、▽山岳遭難の救助、▽災害応援対策――などを挙げ、事態が大きくなった場合は、消防庁の広域航空消防応援に続いて自衛隊に災害派遣を要請する、と説明しました。 このうち林野火災では、今回の墜落事故で水をまくタンクが付いているヘリを失ったため、状況によりただちに各県の消防ヘリの応援を求めます。春先に多い山火事は地上からも消防隊などが消火活動をしますが、長野県内では過去に強風で大規模に延焼した例もあり、足元の消防ヘリの欠落は痛手です。
新ヘリ導入、操縦士ら人材育成には時間必要
県の対応が注目された消防防災ヘリの今後の体制について、「県の直営、民間委託などを含め検討するが、操縦士や整備士の養成、ヘリコプターの確保などに相当の時間を要するため、当面、民間委託を行う方向で検討している」と野池部長が説明。今後、市町村と協議を進めるとしました。県側はヘリコプターを仮に導入する場合は、機種選定や発注、納入について「2~3年はかかる」としています。 当面の民間委託の内容について県側は「まったくの民間委託という可能性は極めて低い。救助隊の職員が現場で働くことになる」とし、ヘリや操縦士の提供などを受けて訓練された消防職員などが現場に赴く形になるとの見通しを示しました。 消防防災ヘリの再建は直営(自主運航)か民間委託かにかかわらず課題は山積。直営の場合はパイロット、整備士の養成も加わって時間もかかります。この日の委員会で県側は「パイロットは2人態勢で継続してきたが、アルプスの高度をこなす技術が難しく、退職した人もいる」とし、委員からも「人材確保が難しく、途中退職もあったと聞く。人員体制について考えるべきではないか」との指摘もありました。