劇場版『ヒロアカ』で宮野真守の「お嬢様」に悶絶 執事役・ジュリオの愛おしさを熱弁する
これまで名だたる声優陣が演じてきた『僕のヒーローアカデミア』。今回、劇場版第4弾『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト』のゲスト声優の発表で宮野真守の名前を見つけた時、「逆に出てなかったんだ!」と驚いたアニメファンもいるのではないだろうか。そして映画館を後にしたとき、これまで彼が過去シリーズに出演していなかったことに感謝したはずだ。それほどに、宮野は今作で“ぴったりすぎる”役柄を演じていたのだから。その役こそが、ジュリオ・ガンディーニだ。 【写真】場面カット(複数あり) ジュリオは、資産家シェルビーノ家に仕える執事。表面上は冷静沈着で言動も丁寧だが、時折垣間見える粗暴な素の部分が、彼の謎めいた一面を際立たせる。 その最大の魅力は、スーツ姿の執事として優雅に紅茶を入れる一方で、育ちの悪さが滲み出る粗野な口調のギャップだ。声の演技という点では、数々のアニメ作品で主演を務め、俳優・歌手としても多方面で活躍する宮野真守の実力は言うまでもない。しかし、まさか『ヒロアカ』で、シリアスからコメディまで幅広くこなす宮野が、口の悪い執事役を演じるとは誰が予想しただろうか。最高の音響環境で宮野真守の「お嬢様」を聞けると思えば、劇場料金の2000円など安いものだ。 原作者・堀越耕平がキャラクター原案を手がけていることもあり、ジュリオはビジュアルも非常に良い。宮野の代表作である某水泳アニメを彷彿とさせるギザ歯ツリ目の特徴が、ファンの琴線に触れないわけがないのだ。身だしなみの整った執事が、大切なお嬢様のために戦いボロボロになっていく姿はもはや“ファンサ”でしかなく、ただただ愛おしい。 ……とここまで一息に語ったところで、個性豊かな『ヒロアカ』の世界観の中で、ジュリオに戦闘向きではない、“ある個性”が設定されている点にも注目すべきだろう。 8/2(金)公開『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト』WHO'S NEXT PV/ヒロアカ劇場版 ジュリオは先天的な個性を活かして戦うのではないものの、とにかく強い。彼の武器は、高度な技術が詰め込まれた義手と義足。さらに、特殊なバイクを駆使して戦う姿は、ハリウッド映画にも引けを取らない派手な戦闘シーンで知られる『ヒロアカ』の中でも、特に目を見張るものがある。中でも、ギミックが仕込まれた義眼は敵を絶対に逃さない鋭さを持ち、観る者を惹きつけて止まない。ぎょろりと動く不気味さと、精密な追跡能力が相まったそれは、もはや彼の“最強の個性”とも言えるのかもしれない(普段は眼帯という要素も大変おいしい)。 そんなジュリオが最も大切にしているのが、資産家シェルビーノ家の令嬢・アンナだ。特別な個性ゆえにダークマイトに狙われる彼女は、本来天真爛漫な性格で、ジュリオとは令嬢と執事の関係にある。演じるのは、宮野と同じくゲスト声優として作品に参加する生見愛瑠。このジュリオとアンナの組み合わせから生まれた「ジュリアン」というカップリングの人気は凄まじく、映画公開後、SNSでは連日ファンアートやコメントが溢れている。 この「ジュリアン」にまつわる話の中で、ファンの間で注目を集めている小ネタがある。それは、劇中に度々挿入される花のカットが「プリムラ・ジュリアン」であるという点だ。この花の花言葉には諸説あるものの、「青春の喜びと悲しみ」「永続する愛」といった意味が込められているという。実際に映画を観たファンなら、この演出の意図に思い当たる節があるのではないだろうか。公式がどこまで意図したのかはともあれ、こうした演出の細かさにも「いや、『ヒロアカ』ならやりかねない……」とつい頷いてしまう。核心をつくネタバレは避けるが、ジュリオとアンナの劇中でのラストシーンのやりとりを観た後では、どうしても“その先”を考えずにはいられない。 先日、原作が完結を迎えた『ヒロアカ』。今回で第4弾となる劇場版シリーズは、原作者が総監修を担うオリジナルストーリーでありながら、テレビアニメの時系列に見事に沿った内容になっているのが特徴でもある。本作では、すでに崩壊した社会が背景となる本編の流れを尊重しつつ、新たなエピソードを巧みに織り込んでいた。原作完結後の今、劇場版次回作がどのような展開を見せるのか、ファンの期待は否が応にも高まる。 アニメの劇場版というと、往々にして「ゲスト声優を出演させるための回」になってしまいがちだが、本作はその罠に見事に陥ることなく、シリーズの幕間に宮野真守演じるジュリオ・ガンディーニという、これ以上ないほど愛すべきキャラクターを生み出してくれた。『ヒロアカ』ワールドの懐の深さを改めて感じさせるジュリオの誕生に、感謝せずにはいられない。
すなくじら