海自艦艇の共同開発、政府がインドネシアに再提案へ…ジョコ前政権下では交渉停滞
政府は、インドネシアに海上自衛隊艦艇の共同開発を改めて提案する方針を固めた。同国が関心を示してきた護衛艦が念頭にあり、中谷防衛相が2025年1月上旬に同国を訪問し、シャフリ・シャムスディン国防相に伝える。東南アジア諸国との安全保障協力を強化する狙いがある。 【表】日本とインドネシアの安全保障協力を巡る主な経緯
中谷防衛相、1月訪問で地ならし
複数の日本政府関係者が明らかにした。インドネシア政府は、護衛艦のほか、潜水艦にも高い関心があり、数年前から共同開発などに向けた協議を続けてきた。ただ、ジョコ前政権下では、首都移転で多大な資金を投じたことなどから、交渉が停滞していた。
同国では10月に、交渉の経緯を知るプラボウォ・スビアント前国防相が大統領に就任。中谷氏は1月5~8日の日程で同国を訪問し新政権との間で交渉の意向があるかを確認する。直後に石破首相も訪問予定で、中谷氏の訪問は首脳会談に向けた地ならしとなる。
防衛装備移転3原則の運用指針では、完成品の輸出について、救難、輸送、警戒、監視、掃海の5類型に限定している。護衛艦や潜水艦は5類型に該当しないため、完成品をそのまま輸出することは現行の指針ではできず、共同開発の形で移転を進める案が有力だ。
インドネシアは経済的な結びつきの強い中国との関係を重視する一方、中国による南シナ海での一方的な進出に警戒感を強めている。プラボウォ氏は4月、中国・北京で習近平(シージンピン)国家主席と会談直後に来日し、岸田首相(当時)との間で安全保障協力の強化を確認した。
共同開発が実現すれば、海洋安全保障分野での戦略的な連携強化の大きな柱となる。
装備品の海外移転を巡っては、従来艦の半分の約90人で運用が可能な「もがみ型」護衛艦をベースにした共同開発をオーストラリア政府に提案している。豪政府はドイツと日本の提案に絞り込み、25年後半に選定する見通しとなっている。
価値観を共有する同志国との連携を強化するとともに、国内防衛産業を活性化するため、日本政府は22年に改定した国家安全保障戦略で、防衛装備品の輸出を官民一体で進める方針を打ち出している。