【レビュー】オレクサンドル・ウシク、再戦でタイソン・フューリーを圧倒 | ボクシング
オレクサンドル・ウシクとタイソン・フューリーが再戦。ウシクが連勝を果たした。
ボクシングにおける再戦は、前回の対戦で残った疑問を解消するために行われるものだ。オレクサンドル・ウシクはタイソン・フューリーとの2度目の対決でまさにその使命を果たし、今回はユナニマスデシジョン(3-0)の判定勝ちで前回以上に明確に結果を示した。 2人は日本時間12月22日、リヤドでWBA、WBC、WBO世界ヘビー級タイトルをかけて対戦。緊迫した試合前のムードの中、フューリーはいつもの自分を取り戻したかのような様子を見せ入場。マライア・キャリーの「恋人たちのクリスマス」、続いてノトーリアス・B.I.G.の「ヒプノタイズ」が流れた。 試合前から「壊滅的な試合になる」と公言していたフューリーは、第1ラウンド開始直後からリング中央の主導権を握ろうとする。だがラウンドを重ねるにつれて、両者の“役割”が入れ替わる展開が始まった。いつもは巧みなフットワークで相手をいなし続けるウシクが、今回は前に出てフューリーを追い込む構図が見られた。 リヤドの明るいスポットライトの下で、ウシクがまったく別人のような戦い方をしていることがはっきりと見えた。普段は相手の攻撃を巧みにかわすことで知られるウシクだが、今回、元WBCヘビー級王者を相手に自ら攻め立てる作戦を選んだのだ。 第3、第4ラウンドでは、ウシクが約127kgのフューリーを追い詰め、顔面やボディに左ストレートを立て続けに当ててペースを握る。流れを変えようとしたフューリーがわずかなチャンスを得たのは第5ラウンド。ウシクがややペースを落としたところで、フューリーはボディへの右ストレートや、初戦でウシクを苦しめたアッパーカットを決めることに成功した。しかし、これは一時的な攻勢にとどまり、ウシクはすぐに呼吸を整えると再び攻撃のギアを上げていった。 第6ラウンド以降は明確なパターンが見え始める。フューリーが一瞬優勢に立つ場面があっても、ウシクはラウンド後半に猛攻を仕掛け、より効果的なパンチとリングワークでラウンドを奪い返す。ウシクの左は常に危険な香りを漂わせており、フューリーがラウンドを取れそうになると、そのたびにウシクがポイントを取り戻すのだった。 終盤3ラウンドでは、ウシクが疲れを乗り越えたかのように再度勢いを増した。フューリーがウシクを止めるにはペースを落とすしかないと考え、ボディブローやクリンチでの押さえ込みなど持てる武器を総動員するが、ウシクはそれらを軽くいなし、むしろ獲物を追い詰めるかのように前進を続けた。 そして第12ラウンド、フューリーが勝つにはノックアウトしか残されていないのは誰の目にも明らかだったが、それは実現しなかった。苦しい戦いが続いたとはいえ、ウシクはまだフューリーを脅かすだけの力と自信を残しており、最後まで倒れることなく判定勝利を手にした。 これでフューリーはウシクに対し2連敗となったが、内容的には進歩も見られた。約127kgもの巨体で、パウンド・フォー・パウンド最強のファイターと12ラウンドの死闘を戦い抜くのは容易ではない。マルタでの3ヶ月間にわたるトレーニングキャンプが功を奏した形だろう。 各ラウンドでわずかな見せ場こそあったものの、それでも試合全体を通じてより効果的に攻め続けていたのはウシクだった。このパフォーマンスは、ウシクこそが世界最強のヘビー級王者であることを改めて証明するものとなった。 今後のウシクには、2月22日(現地時刻)に行われるIBF王者ダニエル・デュボアとジョセフ・パーカーの対戦相手の勝者とアンディスピューテッド戦(4団体王座統一戦)に臨むという選択肢もあるが、あるいは引退という可能性もささやかれている。ウシクはしばしば大きな勝利を手にした後、成果を享受するためボクシング界からしばらく姿を消すのが常だが、世界中のファンはウシクの次なる動向を待っているのは間違いない。
Matt Astbury