「服が欲しくなる」のは服が好きだからではないと気がついた(後編)【エディター昼田祥子】
【(4)季節の変わり目】 季節の変わり目は真新しい服が並び、否応なく刺激を受けますよね。私も手持ちのものに飽きて、何か欲しいなぁと思うことがよくありました。 それは「変化したい」という気持ちがあるから。同じことをし続けている、現状維持な自分に飽きているんです。「変わりたい」も結局、内側にあるものが表に出たがっているからこそ。でも人は新しい服を身につけることで「変化した自分を味わおう」としてしまいます。だって新しい一歩を踏み出すよりも、洋服を買うってすごく簡単なんですよ。
自分を表現する。 それは、この連載のように自分のことを文章にすることかもしれないし、写真を撮る、絵を描く、ダンスを踊る、器を作る、うたを歌う、楽器をひく、服を作る……本当はやりたいけれど諦めてしまったり、やっても意味がないと思っていたり、我慢していることがみんなあるのだと思います。 私の場合は、隅々まで自分の好きが詰まったサイトを作ってみたいとずっと思っていました。いつもクライアントの仕事をやってきたけれど、誰にも迎合せずに、自分の思うままに好きなだけこだわってみたい。 内側にある、自分の熱狂を表に出していく楽しさは、服で得られる束の間のワクワク感とはわけが違います。圧倒的な喜びと満足感は、服なんかでは代用できないのです。 ですから今の私は、服がふと欲しくなったときにいきなり買いに走るのではなくて、まずは自分に問いかけるようにしています。 「私の中にまだ表現できていないことがある。それはなんだろう?」と。 実際に行動に移せるかどうかではなくて、大切なのは「本当は〇〇がしたいと思っている自分」を認めていくことだと思います。そういう本当の自分がいるのだと知っていくこと。 服が欲しくなるのは、持ち主に気がついてもらいたがっている才能からのサイン。あなたにもたくさん届いているはずです。 昔の私は、無視しながら生きる人生でした。 今の私は、気づいて丁寧に光を当てていく人生です。 大きく変わりましたよね。 着用・文/昼田祥子 構成/出原杏子
昼田 祥子