「浅間国際フォトフェスティバル2024 PHOTO MIYOTA」開幕レポート
自然豊かな長野・御代田町。ここにある複合施設MMoP (御代田写真美術館=Miyota Museum of Photography)」で「浅間国際フォトフェスティバル 2024 PHOTO MIYOTA」が始まった。 「浅間国際フォトフェスティバルPHOTO MIYOTA」は2018年にスタートし、今年で5回目。昨年は過去最多となる約3万人の来場者を迎えた。会場となるMMoPは、かつてのメルシャン軽井沢美術館の建物を中心に、衣食住と多様な写真表現を楽しむ複合施設。ここを舞台に、屋内外で世界各地から集まった17組の写真表現を楽しむことができる。 ロエベ財団がメインスポンサーを務める今回のテーマは、「Memories Through Photography 写真の中の記憶」。これは写真を記録媒体であると同時に記憶の装置であると考えるもので、本フェスティバルでは世界の写真家たちの視点を通し、⼈、⾃然、社会、⺠族やその場所、モノなどがもつ記憶をテーマに、そこに秘められた物語や歴史、思い、問題などを写真であぶり出すことを目指す。 今回の中心的な存在と言えるのが、会場中心部にある2階建ての巨大な建物で展開されるロエベ財団による展示だ。 同財団は、昨年から400年以上続く京都の「釜師」大西清右衛門家への6年間に渡る活動支援を行っており、会場にがその大西清右衛門家を題材にした、小見山峻、五十嵐邦之、横浪修による作品の数々が展示されている。 会場1階の中心には、畳を設えた茶室のような空間が出現。そこには16代 大西清右衛門の茶ノ湯釜を中心に、大西家所有の茶器の数々を横浪の写真とともに見ることができる。またその周囲では、小見山と五十嵐が撮影した、職人としての大西家の姿が展覧。いっぽう2階に並ぶのは、横浪がとらえた大西家の家族としての日常風景だ。大西家の人々と対話するような空間を楽しみたい。 もうひとつの建物では、カルロス・イドゥン・タウィア、須田一政、カート・トン、鈴木理策の4作家が展示。 カルロス・イドゥン・タウィアの《Sunday Special》は、作家の記憶と接続するシリーズだ。ガーナでキリスト教を信仰する家庭に育ったタウィアは、自身の家族アルバムを観察し、一般的な視点から「日曜日の日常」を時代考証を踏まえて演出。記憶の中にあるが、いまは届かない心象風景を生み出した。 カートン・トンの作品《Combing for Ice and Jade》にも注目したい。2018年のアルル国際写真祭でPhoto Folio Awardを受賞した本作は、作家が幼少期から家族同様に過ごしてきた乳母を題材にしたもの。この乳母は、かつての中国で一生独身を貫くと宣言した女性「自梳女(じそじょ)」のひとりだという。本作は、乳母が持っていた8枚だけのポートレイト、乳母が映り込んでいる作家の家族写真などで構成されており、中国の歴史や文化、そして女性の生き方を映し出す。
文・撮影=橋爪勇介(ウェブ版「美術手帖」編集長)