国会へ行こう!(11月9日)
政権与党の自由民政党が分裂し、所属していた議員が結成した新日本党と激烈な衆院選を繰り広げる―。どこかで聞いたような話だが、本当の出来事ではない。1993(平成5)年に公開された映画「国会へ行こう!」の最終幕の粗筋だ▼現実の世では、その年に衆院選が行われた。自民党は分裂し、新党も生まれた。自民党が定数の過半数を割り込み、日本新党を率いた細川護熙首相の非自民連立政権が発足した。まるでスクリーンの向こうを地で行くようだった▼映画では、16年前に亡くなった俳優緒形拳さんが政治改革実現を目指す野心的な衆院議員に扮[ふん]した。「政治とカネ」や政敵との駆け引きを絡め、政界の表と裏を全身からにじみ出る名演で、軽妙かつ滑稽に描いた。ただ、緒形さん演じる議員は選挙後、国会には行けなかった▼こたびの465人は激動の実戦を勝ち抜き、ひとまず国会行きの切符を手にした。震災と原発事故からの復興、政治改革、経済対策、外交安保…。実物の議員諸氏には難題が待ち受ける。週明けの特別国会は、首相指名を巡る少数与党と分断野党の場外戦の結末が示される。虚実にまみれぬ実写版民意政治の封切りを誰もが望んでいる。<2024・11・9>