「光る君へ」岸谷五朗 人生初のおじいちゃん役演じ「いい還暦の年に」 新たな挑戦で「プリンを作りたい」
NHK大河ドラマ「光る君へ」(日曜後8:00)は17日、第44話「望月の夜」が放送され、まひろ(吉高由里子)の父・藤原為時が三井寺で出家した。まひろを見守り続けた為時が人生の節目を迎えた。為時を演じた俳優の岸谷五朗(60)自身、今年は還暦を迎える区切りの年。大河で主人公の父親役&人生初の「おじいちゃん役」に挑戦し、「いい還暦の年になりました」と充実感をのぞかせた。クランクアップ直前にスポニチのインタビューに応え、今作への思いをたっぷり語った。 <※以下、ネタバレ有> 「ふたりっ子」「セカンドバージン」「大恋愛~僕を忘れる君と」などを生んだ“ラブストーリーの名手”大石氏がオリジナル脚本を手掛ける大河ドラマ63作目。千年の時を超えるベストセラー「源氏物語」を紡いだ女流作家・紫式部の波乱の生涯を描く。大石氏は2006年「功名が辻」以来2回目の大河脚本。吉高は08年「篤姫」以来2回目の大河出演、初主演となる。 丸めた頭にタオルを巻いて登場した岸谷。記者が興味津々に見つめると、「見ます?」とタオルを外した。きれいな剃髪姿に記者から驚きの声が上がった。剃髪は特殊メークだという。「凄いですよね。剃ったと思いますよね。3Dプリンターみたいなやつで1時間18分でできます」と自慢げに語った。 為時は亡き妻・ちやは(国仲涼子)と息子・惟規(高杉真宙)の菩薩を弔いながら余生を過ごすために出家する。惟規は第39話「とだえぬ絆」(10月13日放送)で為時の腕の中で亡くなった。為時は「惟規!」と何度も泣き叫んだ。このシーンについて、「辛かった。彼が登場してからの芝居がうわーっと浮かんだ。明るい能天気な可愛い可愛い息子だった。あっけない突然の死はたまらなかったですね。妻を失い、惟規も亡くなった。順番を守れなかったのは為時さんのかわいそうなところです」と、悲しみをあらわにした。 また惟規が越後に向かう途中に馬の上で倒れるシーンを「ロケに行ったのがとても暑い日だった」と回想。「馬の上は馬の体温で熱い。サウナにいるみたい。“惟規、早く倒れろ。倒れないと馬から降りられない”となった。本当に思い出深い大変なシーンでした」と、撮影中のエピソードを明かした。 為時は宮中に出仕したまひろに代わって、いと(信川清順)らとまひろの娘・賢子を育てる。岸谷にとって人生初の「おじいちゃん役」だった。「為時と賢子は仲良しのおじいちゃんと孫。賢子が物凄く悪いことをしても賢子の味方という感じがしました」。まひろには時に厳しかった為時だが、賢子にはひたすらに甘い。「親はしっかり育てて嫌われないといけないけど、おじいちゃんは無責任に可愛がるだけ。(自分も)孫にはぐにゃぐにゃに甘いんだろうな」と目を細めた。 また、賢子が道長(柄本佑)との“不実の子”であることについて「平安における常識でジャッジしないといけない。賢子が道長の子供であることがきっかけで有利に事が運ぶのではないかというずる賢さがあった」と、為時の胸中を打ち明けた。 岸谷は9月に還暦を迎えた。「びっくりです。吉高にちゃんちゃんこを着せられました」と照れ笑い。節目となる今年は大河ドラマへと並行するかたちで、自らが主宰する演劇ユニット「地球ゴージャス」の三十周年記念公演の作・演出・出演を務めた。「そっちの芝居にも集中していたんですけど、為時はしっかり頭の別の部屋にいる。舞台もあったから余計に愛おしいですね」と感慨深げだった。 還暦を超えても第一線を走り続けるために、肉体づくりに余念はない。毎日約10キロのランニングをしているという。「夏は日焼けが天敵でした。平安は手首から下を焼けたらいけない。手袋をしておばちゃんが被るような帽子を被って走っていました」と、黒く焼けた腕を見せながら語った。 今作では自身初となる大河ドラマのクレジットのトメ(出演者の最後に名前が載ること)も経験した。「いい還暦の年になりました。還暦で新たな生まれ変わりだとよく言うんですけど、自分が60歳になるとその気持ちがとってもよく分かります。今までやってきたことを勉強して、次の新しいものにいける気がする」。具体的に挑戦したいことを聞くと、「映画を作りたいも結局仕事になる…。だからプリンを作りたいですね」と、意外な答えが返ってきた。「実はプリンが好き。今は一周回って固めが好きです。プリンとジンを作りたいですね」。お茶目さと大人の渋みを兼ね備えた岸谷の演技は、ますます円熟味を増しそうだ。