〈本社記者・パリだより〉ひかる 顔を上げて なでしこ準々決勝敗退、延長で失点悔やむ
●「被災地にメダル持って行きたかった」 【パリ=田島大之】「被災地にメダルを持って行きたかった」。パリ五輪第9日の3日、女子サッカー「なでしこジャパン」の北川ひかる選手(INAC神戸、金沢市出身)は米国に0―1で敗れた死闘を振り返り「申し訳ない気持ちと悔しさでいっぱい」と目を真っ赤にした。ふるさと石川への思いを胸に2試合を戦い「もっと選手としてレベルアップしたい。ともに頑張っていこうと伝えたい」と前を向いた。 力の限りを尽くしたが、及ばなかった。圧力をかけてくる米国に日本は防戦一方で、北川選手も前半は守備に追われた。得点を与えずにいると、日本のボールを持つ時間が徐々に増え、ゴールチャンスが生まれる。北川選手は左サイドからクロスを送り、ゴール前にも飛び込むなど積極的に攻撃に参加した。 0―0で突入した延長前半のアディショナルタイム。北川選手が相手選手に振り切られ、シュートは無情にもサイドネットに突き刺さった。失点に絡み「全体で守れていた中で、あの1点を決められてしまって本当に申し訳ない」。膝の痛みや疲労はあったが言い訳にしたくないといい「しっかり耐えなければいけない場面だった」と後悔が消えなかった。 膝のけがで出遅れ、全4試合中、2試合に出場した。初出場は1次リーグのナイジェリア戦。直接フリーキックを決めて鮮烈な五輪デビューを飾った。 だが、メダル獲得はかなわず、「世界の相手と常に戦う環境に行って、自分を高めたい」と海外挑戦の意欲をみせた。「石川のみんなに喜んでいる姿を見てもらいたかった」と北川選手。「能登の被災地にパワーを届けられたか分からないけど、メダルを持って足を運びたかった」と目を潤ませた。取材中、涙は止まらなかったが「また頑張ります」と力を込めた。