元宝塚×大衆演劇×現代劇 上田久美子の挑戦は蒲田温泉宴会場から 24日に旗揚げ公演
「生活の営みに、演劇を取り戻したい」。宝塚歌劇団の座付き作家・演出家として高く評価されていた上田久美子が24日から、自身のユニット旗揚げ公演となる新作「寂しさにまつわる宴会」を上演する。会場は東京都大田区の蒲田温泉の宴会場。元宝塚、大衆演劇、仏演劇学校出身という女性3人の異種格闘技から、何が生まれるのか。 【写真】大衆演劇の端役女優と工場労働者の女性の物語が、蒲田温泉で展開する「寂しさにまつわる宴会」のチラシ ■古来の芝居に戻したい 「私自身、10年来の大衆演劇ファン。九州の温泉でくつろいでいるとき、初めて出会ったから宴会場が原風景。同じ環境でお見せしたい」とユニークな会場選びの理由を話す上田。目指すのは、生活に密着する場で人が飲み食いしながら活力を得る「古来の芝居のありよう」だ。 新作は、大衆演劇を巡る孤独な女性たちを描く。一座の端役女優(三河家諒)が年齢を重ね、難しい立場になる中、日々の生活で孤独を感じる工場労働者の女性(竹中香子)が偶然、舞台を見て心を奪われる。そこから怒濤の〝推し活〟が始まる-。 「なぜ人は、誰かを好きになりたいのか。その奥底にある要求は何か、という疑問から生まれた作品」(上田)に出演するのは、仏国立高等演劇学校で学び、パリを拠点に活躍する現代劇の竹中。一方、三河家は15歳から大衆演劇で活躍してきたベテランで、実は主演級だ。本番の舞台では、上田も司会として加わり、音響や照明など裏方も務める。 宴会の余興として芝居が始まり、舞台と客席の垣根がなくなって互いの寂しさを癒やせる場となれば、上田らの挑戦は成功だ。 ■自ら企画制作第1作 上田は宝塚在団中、「星逢一夜(ほしあいひとよ)」など美しい日本語と繊細な心理描写で、作品を発表するごとに話題を呼んだ。惜しまれつつ令和4年に退団した後は、旅回り一座に住み込んでスポットライトを操るなど、好きな大衆演劇の世界を体験。 さらに文化庁の海外研修制度を利用し、学生時代も留学したパリで学んだ。仏公共劇場で研修し、多国籍の俳優とのワークショップも行った。今回の創作では、これらの経験が生かされている。 「宝塚時代は、私が全部、頭の中で台本を書いた。今回は、俳優からの提案で、即興で作るやり方を試したかった」