英国沿岸のカニからコカインの成分検出、下水や雨水とともに流出か 海洋生物の生態に影響も
英国沿岸に生息する海洋生物から、コカインや合成麻薬エクスタシーの成分が検出されている。英ポーツマス大学とブルネル大学の研究者が明らかにした。これらの汚染物質は雨水や下水などとともに川や海に流出したとみられる。専門家によると海洋生物に対する薬物の影響についてはまだ完全には分かっていないが、一部の生物の自然な行動を変化させる可能性があるという。 「海洋生物からコカイン、MDMA、メタンフェタミンが検出された。これらの成分はカニやカキ、海藻、堆積物に生息するミミズの中に含まれていた」(ポーツマス大学の海洋生物学者、アレックス・フォード教授) 現在行われている研究には、水質や水源付近で報告されている疾患の増加を懸念する市民らも協力している。 研究者らはチチェスター港とラングストーン・ハーバーから数百のサンプルを採取した。その結果、高濃度の潜在的に有害な化学物質が含まれていることが分かった。 ポーツマス大学の海洋生物学者、アレックス・フォード教授は次のように述べた。「この地域の汚染の一部は、雨水の氾濫や下水によるものだ。この辺りには長年の埋立地が点在しており、何十年も前に禁止された化学物質が漏れている可能性がある。また、農業や道路からの排水も大量に流入している」 この地域の上下水処理を担当するサザン・ウォーター社は2021年、イングランド南部の河川や沿岸海域を汚染した数千件の下水の違法排出の罪を認め、9000万ポンド(約179億円)という記録的な罰金を科せられた。 研究者らは、薬物や医薬品が人体を通過した後、水中に流れ込むことを発見した。 フォード教授によると、海洋生物に対する薬物の影響についてはまだ完全には分かっていないが、一部の生物の自然な行動を変化させる可能性があるという。 「下水処理場の下流で魚を飼育すると、2―3週間で雌化し始める。カニや魚に抗うつ剤を投与すれば、私たちがその薬を服用した場合と同じように、カニや魚の行動が変化する」