宮藤官九郎脚本『終りに見た街』に堤真一、奥智哉ら出演へ 吉田羊が大泉洋の妻役に
9月21日に放送されるテレビ朝日開局65周年記念ドラマプレミアム『終りに見た街』に、吉田羊、堤真一、奥智哉らが出演することが決定した。 【写真】主演の大泉洋と脚本の宮藤官九郎 原作は、脚本家・小説家の山田太一が、戦争体験者の一人として厳しい体験を次世代に伝えることをテーマに執筆したもの。1982年と2005年に2度、山田自らの執筆でドラマ化され、約20年ぶり3度目のドラマ化となる今回は、宮藤官九郎が脚本を手がけ、大泉洋が主演を務める。 令和の時代に東京郊外で何不自由なくありふれた日常を暮らしていたテレビ脚本家・田宮太一(大泉洋)の一家は、ある日突然、昭和19年6月にタイムスリップし、太平洋戦争まっただ中の時代を懸命に生きることになる。 大泉とは『ラストマンー全盲の捜査官ー』(TBS系)で共演した吉田が演じるのは、太一の妻・田宮ひかり。家庭では太一が威厳の欠片もなく家族からウザがられる一方、家事や介護に忙しくしながらも、パートの仕事にやりがいを感じて頑張るしっかり者のひかりは、戦時下でも、時に太一を叱責しながらも寄り添い、家族が生き延びるために懸命に支える。吉田はひかりについて、「守るべき家族や子どもたちがいて、愛する存在を守るという思いで自ら変わっていくことを選択していく。そういう強さを持っている人」と語った。 一方、大泉とは『駆込み女と駆出し男』(2015年)と、2025年1月17日に公開を控える『室町無頼』で共演経験のある堤が演じるのは、太一たち一家と時同じくして過去の世界に迷い込んだ、太一の父の戦友の甥・小島敏夫。太一が愚痴っぽく、いちいち悩んだり考えたり立ち止まっている傍ら、陽気で人当たりが良く、目の前のことを受け入れて前向きに動く敏夫は昭和19年の世界にもすぐに馴染み、太一とは正反対ながらも、戦時下で生きる中で太一の良き支えとなり、仲間になる。堤は敏夫の「あまりに昭和19年を受け入れすぎている」ことにやや衝撃を受けたようで、「『もしかしたらこれは全部“田宮太一の夢”なんじゃないか?』と思えるような時もあるんですよね。そういう意味で敏夫は、太一が作り出した『自分(=太一)にできない、この世界に適用する象徴』みたいな形で出ているのかな」ということも考えながら演じたと明かす。 そして奥が演じるのは、父・敏夫と一緒にタイムスリップした息子・小島新也。新也は、口数が少なく、何を考えていのるかわからないミステリアスな青年だ。また、思春期真っただ中の太一とひかりの娘・田宮信子役を務めるのは、大河ドラマ『どうする家康』(NHK総合)などで知られる當真あみ。“令和のイマドキ女子高生”の信子は、昭和19年の過酷な状況下で生きていく中でやがて変化を見せる。太一とひかりの息子・田宮稔を演じるのは、映画『スイート・マイホーム』(2023年)をはじめ、ドラマ、映画、CMなどに出演する子役・今泉雄土哉。戦争を知らない稔が戦時下で変わっていくさまを体現する。 さらに、大泉演じる太一の母親・田宮清子を演じるのは、『男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日』(1988年)でマドンナ・真知子を演じ、大河ドラマ『いのち』と『花の乱』で2度の主演を務めた三田佳子。唯一の戦争体験者である彼女は、認知症が出始めているが、タイムスリップした先の昭和19年では清子の記憶が太一たちの頼りに。ただ状況を理解しているのかしていないのか、時に恋をするなど、戦時下でひとりのほほんとした空気を纏う。 一方、現代において太一が仕事でお世話になっているプロデューサー・寺本真臣を演じるのは、宮藤脚本のNHK連続テレビ小説『あまちゃん』などで知られる勝地涼。本作でも薄っぺらく、ノリの軽いキーパーソン・寺本を演じる。 さらに、令和の時代、ひかりのパート先であるドッグウェア専門店のオーナー・五十嵐役に神木隆之介。太一が脚本を手掛けたドラマ『刑事七、八人』の出演者である先輩俳優役で田辺誠一、後輩俳優役で塚本高史が登場。ほかにも、太一と敏夫が食糧難の中でほどこしを乞う農夫役に西田敏行、タイムスリップした直後の太一に激しく詰め寄る昭和の老人役に橋爪功が共演に名を連ねた。 吉田羊(田宮ひかり役) コメント 最初に脚本を読んだ際の感想 山田太一さんの作品はこれまで見ていましたし、宮藤さんの脚本といえば俳優の皆が目指してでもご一緒したい脚本家さんですので、その2人のタッグである本作ということで、大変面白く台本を読ませていただきました。戦争経験者である山田さんが描くリアルさに、宮藤さんならではのユーモアと、そして現代的な新しい感覚が合わさって、戦争ドラマではありますが、これまでに見たことのないような全く新しい世界だなと思いました。 田宮ひかりという役柄の印象、実際に演じた感想 ひかりさんはとても真面目で責任感が強い人なんですよね。現代においても、家事をこなしながら手に職を持っていることを誇りに両立しているんですが、昭和19年にタイムスリップしてからは、最初は戸惑いながらも、彼女はわりと早々に受け入れて、そして前向きに色んなものを諦めていきます。彼女には守るべき家族や子どもたちがいて、愛する存在を守るという思いで自ら変わっていくことを選択していく。そういう強さを持っている人だなと思いました。もし私だったらこんなにスピーディーに受け入れられるだろうかと考えましたが、自分もまた、もしかしたらそういう選択をしていくかもしれないなと思った時、そういう意味では自分の思考に近いキャラクターだなと思いました。 ただ、このお仕事を始めてから、私は戦前戦中の役を演じた経験はそんなに多くなく、お芝居とはいえ当時の格好をして、昭和19年を生きる俳優さんたちと対峙した時にやっぱり怖かったんですよね。この時代の人々がこれをリアル体験していると考えたらどれだけ怖く、絶望的な気持ちで日々を生きていたんだろうと思うと、改めて本当に恐ろしい時代だと感じました。 大泉洋と共演した感想 大泉さんの存在は安心感がとてつもなくありました。何をやっても受けてくださるし、もちろん洋さんの方から発信してくださるアイデアもあって。実際に洋さんが現場で提案されたことが採用されてシーンに風穴が開いたり、深まったり、広がったりということが幾度となくあったので、座長としても、そしてお人柄も本当に心から尊敬している、その気持ちを新たに抱いた現場でした。 令和の今、この作品を届けることについて まさに今、世界で戦争が起こっている時代だからこそ、やる意味がある作品かなと思います。山田さんご自身が戦争体験者でいらっしゃいますので、山田さんが描かれる描写は、とても詳細で見ている人がありありと思い浮かべることができるリアリティがあるんですね。そこに宮藤さんならではのユーモアと現代の感覚を持ったリアリティが重なることで、若い方にも身近に感じていただけると思います。なので、このドラマをきっかけにより自分事として戦争をとらえて、できればご家族で話し合いの時間をもって「これはどう思う?」など、戦争について考えを深めていただきたいなと思います。 視聴者へのメッセージ このドラマは戦争ドラマではありますが、自分が理不尽な状況に置かれた時や自分ではどうしようもできない力が働いてる場所に身を置くことになった時に、「あなたはどう生きるか?」「どう選択するか?」ということを問われている作品でもあると思っています。太一さんがとった選択にご自身を重ねて、自分だったらどうするだろうと考えていただいたり、現実世界においても、例えば、自分ではない誰かが理不尽な環境に置かれている時に、どういう声掛けができるのかなども考えていただけるきっかけになったらいいなと思います。 堤真一(小島敏夫役) コメント 最初に脚本を読んだ際の感想 僕は元の作品を知らなかったのですが、山田太一さんが描かれたベースのテーマと、宮藤くんの軽快さというか、会話の妙みたいなものが合わさって、本当に面白いよくできた作品だと思うと同時に、恐ろしい作品だなと思いました。 小島敏夫という役柄の印象、実際に演じた感想 僕が演じた小島敏夫というのは、タイムスリップを何度もしているんじゃない?と思うほど、あまりに昭和19年を受け入れすぎている男で、「しょうがないじゃん」みたいな感じで、どんどん時代に適応していくんです。そういう適応力や生きていく能力に長けた人ですが、僕自身を考えた時に、こんなバイタリティもないし、なんだったらパニックを起こして、それだけで終わってしまうんじゃないかと思うほど、敏夫とは全く違うし理解できなかったです。ただ、脚本を読んで演じていくうちに、「もしかしたらこれは全部“田宮太一の夢”なんじゃないか?」と思えるような時もあって。そういう意味では、敏夫は太一が作り出した「自分(=太一)にできない、この世界に適用する象徴」みたいな形で出ているのかなと思うこともありました。 令和の今、この作品を届けることについて 僕らが若いころは、毎年夏になって終戦の日である8月15日が近づくと、各局で終戦や戦争関連の作品が放送されてきましたが、昨今はどこかその空気が薄くなってきていて、特に若い人にとっては「そんな大昔の話は知らん」という気持ちになっている人もいたと思うんです。でも、そういうことから離れてきている時代にこそ、宮藤くんの脚本ならではの軽快さとドラマとしての面白さと最終的にきちんと“戦争の悲惨さ”を訴えていくというのはとても意義のあることだと思うので、宮藤くんが書いたことはとても大きいと思います。
リアルサウンド編集部