まるで「桃源郷」満開の花桃 農家が50年かけて作った風景
高知県仁淀川町久喜地区では白やピンク、赤色の花桃が満開を迎え、里山に春の訪れを告げている。「桃源郷」に例えられるこの風景は、農家が植えた1本の木から始まった。 【動画】満開の花桃を空撮…まさに「桃源郷」 「今がちょうど見頃やで。ええ時に来てくれたね」。同地区の茶農家、樋裏勇一さん(92)が訪れた人たちと談笑していた。 花桃は樋裏さんが約50年前、「源平花桃」を茶畑に植えたのが始まり。その後、高齢化や茶の価格下落などが原因で、耕作者がいなくなった畑が荒れないようにと増やした。以降植え続け、多い年では100本ほどを休耕地に植樹した。 約15年前には同地区の茶農家、田元通弘さん(82)が、樋裏さんから苗木をもらい畑に植え始めた。これまで約1500本を植え、自宅の窓から見える一面の花桃は田元さんの自慢の光景だ。 現在、2人で木の剪定(せんてい)や草刈りなどを農業の合間に作業。約50アールで2000本ほどを管理している。 今では見頃の週末になると、600人以上が訪れる名所になった。田元さんは「苦労はあるが春にはたくさんのお客さんが来てくれて、にぎやかになるんが一番うれしいね」と話す。 花が散る4月下旬になると、茶摘みが始まる。樋裏さんは「それまで少しばかり花見を楽しませてもらおう」と満開の花を見上げながら笑う。(山田凌)