国内レース育ちの宮田莉朋がいきなりFIA F2へ……特に苦労する点とは? スーパーフォーミュラより“原始的”なマシンで「感覚的に乗れるようにならないと」
2023年のスーパーフォーミュラ、そしてスーパーGT(GT500)王者である宮田莉朋が、2024年はFIA F2に参戦することになった。既にアブダビのポストシーズンテストでF2マシンを体験した宮田が、その感触などについて語った。 【ギャラリー】日本のF1ファンが選んだ”あなたの好きなフェラーリ”ベスト10。圧倒的得票数で1位に輝いたマシンはこれだ! 2023年シーズンは宮田にとって飛躍の年となった。スーパーフォーミュラでは第3戦の初優勝を皮切りに最後まで高水準のリザルトを記録し続けてチャンピオンに。スーパーGTでも坪井翔とコンビを組み、TOM'Sの36号車でシーズン3勝を記録してタイトルを獲得してみせた。 24歳にして国内トップカテゴリーで“2冠”を達成した宮田は、常々F1への思いを公言していたが、F1参戦に必要なスーパーライセンスのポイント要件もクリア。そして2024年はローディン・カーリンからF1直下のカテゴリーであるFIA F2に参戦することが決まった。近年のトヨタ系ドライバーはF1に繋がる道がないと言われてきたが、マクラーレンのリザーブドライバーに就任する平川亮も含めて、トヨタ系ドライバーに新たな道筋が開けた形だ。 宮田はアブダビのヤス・マリーナ・サーキットで行なわれたF2のポストシーズンテストに参加。カーリンのマシンで3日間走り込んだ。その感想としては、日本で走らせていたマシンとは全く異なると感じたという。 「日本のカテゴリーとは全然違いますね。F1のステップアップカテゴリーの車両特性はこうなんだと分かりました」 「どストレートに言えば、クリーンなクルマではありません。ドライバーの力量だけで成績が出ないというか、色々な要素が大きいです。具体的なことは言えませんが、今後はそれに対してどうすべきかについて、チームやTGR(TOYOTA GAZOO Racing)の皆さんと一緒に取り組んでいくだけだと思います」 日本のカテゴリーとF1直結のカテゴリーでは、まずタイヤが異なる。F1をはじめ、直下のF2やF3ではピレリタイヤが使われるが、そのフィーリングについては、ロングランよりもショートランで難しさを感じたという。 「ショートランは難しかったですけど、ロングランの方が悩みは少ないですね。ロングランはチームメイトより速い時もありました」 「ショートランに関しては、タイヤのウォームアップという面もそうですが、特にF2マシンは表示される情報が少なく、タイヤの温度や内圧ブレーキ温度が分かりません。そこが感覚でしか分からないので、1年目で成績を残すのは難しいと思います」 「これまでに“FIA”と名のつく(F2やF3の)カテゴリーのマシンで走っていれば問題ないと思いますが、僕はそこではないカテゴリーから上がってきたので、クルマやタイヤの使い方を感覚的に掴めるようにならないと難しいと思います」 それらを踏まえて、F2車両はスーパーフォーミュラやスーパーGTの車両よりも“原始的”だと表現する宮田。F2を経験したドライバーがスーパーフォーミュラに参戦するのと、宮田のように日本のカテゴリー出身のドライバーがF2に参戦するのとでは、その難易度は異なると語る。 「日本のスーパーフォーミュラ、スーパーGTと比べると原始的ですし、どれだけ日本のクルマが楽だったのかという感じですね」 「ヨーロッパのドライバーがSFに来た時に速い理由が分かりました。(SFは)クルマが走ってくれますから。(国内カテゴリーを経てF2に参戦するのは)海外から日本に来て走るよりも難しい部分もありますが、やれることはひとつひとつやっていきたいです」 加えて、これまで海外での4輪レース参戦経験がほとんどない宮田にとっては、F2開催サーキットも全てが初体験。置かれた状況を考えると1年目から結果を残すことは容易でないと言えるが、それでも宮田はチャンピオン獲得を目標に掲げる。 年末はイベント出席など大忙しの日々を過ごす宮田は、年明けには日本を出発し、そこからヨーロッパを拠点に生活することになる。しかも1月にはデイトナ24時間にも参戦予定……まさに怒涛の1年となりそうだ。
戎井健一郎
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