「~オール・久石譲・プログラム~」ザ・フェニックスホールで開催
2021年の「オール・ライヒ・プログラム」に始まり、翌2022年のフィリップ・グラス『浜辺のアインシュタイン』では令和4年度文化庁芸術祭大賞を受賞するなど、ミニマル・ミュージックを中心に関西の現代音楽の新たな拠点となりつつあるあいおいニッセイ同和損保ザ・フェニックスホール。昨年はパーカッショングループ、ビートジャックを迎え白熱のアンディ・アキホほかに挑んだ同ホールが、10月12日(土)、「ジャパニーズ・ミニマル・ミュージック~オール・久石譲・プログラム~」と題し、作曲家久石譲を取り上げる。映画音楽を中心に絶大な人気を持つ久石の原点にして核心ともいえるプログラムである。 「ひと言でいうなら誰も知らない久石さんで、かつ本当の久石さんの音楽を演奏しようというコンサート。1984年の『風の谷のナウシカ』あたりからの音楽はどなたもがご存知ですが、久石さんは学生の頃からミニマル・ミュージックを作曲の中心に置いていて、現在も映画やアニメのいたるところからその響きが聞こえてくる。ミニマル・ミュージック史上、極めて重要な作品であるスティーヴ・ライヒの『ピアノ・フェイズ』が1967年であることを思えば、1950年生まれの久石さんはほぼ同時代の音楽としてミニマルを吸収していて、日本でのこのジャンルの推進者の1人といえる存在だと思います」。そう語るのは本公演の音楽監督を務めるピアニストの中川賢一。彼の監修のもと演奏には全国から『浜辺のアインシュタイン』以来の精鋭が集まった。久石作品への深い理解とエンターテイメントが共存した、熱気に溢れたステージが期待できる。 前半は主に久石の2012年のアルバム『エッシャー&フェルメール』から、ピアノ・アンサンブルを中心としたアコースティックな作品を。そして後半には久石が自身の中のミニマル・ミュージックを再確認したような2000年のアルバム『ヴィオリストを撃て』からの作品を10名のバンド編成で演奏する。『Kids Return』や『Summer』といった耳になじんだ楽曲にも息づくミニマリズムの強度は、このジャンルにおける久石の足跡を改めて認識させてくれるものとなるだろう。本公演に久石は登場しないが、そのことによってコンサートの性質はより鮮明となる。これは日本のミニマルの巨匠、久石譲に彼のフォロワーたちが光を当てた、初めての画期的なコンサートなのである。なお、同公演は11月10日(日)、彩の国さいたま芸術劇場音楽ホール (埼玉県)でも開催される。 取材、文/逢坂聖也(音楽ライター)