「やる勇気」「任せる勇気」をバランス良く駆使してゲーム全体を支配する「勝たせる勇輝」へ(Bリーグ・横浜ビー・コルセアーズ 河村勇輝)
チームが勝つためにやれることにすべてを捧げ、最善を尽くしたい
海外進出を視野に入れる河村であり、評価されるためにもスタッツは分かりやすい。しかし、数字のためにプレーしていないことを、12月20日のファイティングイーグルス名古屋戦後に言及していた。 「僕は得点王とか、そういったものを狙っている思いは全くなく、ただただチームが勝つために自分がすべきことをしたいという気持ちです。今は自分が無理に得点を取りに行くことよりも、まわりのシュート率もそうですが、例えば(キング)開選手のスリーポイント成功率は僕よりも高いですし、フリーで彼が打つことでチームとしての期待値もそうですし、若い選手なので1本シュートが入ればガラッと自信の持ち方や、その後のディフェンスの強度が本当に変わります。僕が打てるときはもちろん打ちますけど、どっちにも選択肢があるならば、今は彼に託すことを試みています。とにかくスタッツどうこうよりも、チームが勝つためにやれることにすべてを捧げ、最善を尽くしたいです」 同世代の若い選手も多い横浜BCにおいて、「一番バスケットボール選手として大切なことは自信を持てるかどうか」と河村は述べ、チームとしての成功体験を欲している。今シーズンこれまでの戦いを通じて、「得点にフォーカスすれば、30点を取ろうと思えば僕は取れると思いますし、アシストにフォーカスすれば10本以上取れる。そういった強い自信みたいなものはあります」という言葉どおり、素晴らしい数字を残すことはできている。だが、バスケはチームスポーツであり、一人の能力が長けていても成功はつかめない。 己に課した「やる勇気」と「任せる勇気」。この2つのスイッチをバランス良く使いこなせるようになれば、自ずと「勝たせる勇輝」へと進化を遂げるはずだ。もがきながら26試合を終えて見えた手応えと課題について聞いた。 「最初の20試合はチームとして得点を求められている中で、自分のタイミングでシュートを打ち続けてきました。でも、チームとして結果がうまく出なかったからこそ、やっぱり自分の中でアシストにもう1度目を向けるようになりました。今、自分の中では得点とアシストのどちらもスタッツだけで言えば、数字を残すことはできます。ただ、それを瞬時に判断してチームの流れを作っていくことが、やっぱり僕にはまだまだ足りていないところだと思います。ゲームの流れをしっかりとつかみながら、チームが安定するように瞬時の判断ができるようになれば、自分の強みである得点力とアシストでチームをうまく回しながら、ゲーム全体を支配できるポイントガードになれるのではないかと思っています。だからこそ、今は得点が必要なのか、アシストが必要なのか、誰が乗っているのか、どこを攻めたら良いのか ── その瞬時の判断が、まだまだ僕には足りていない。経験を積み上げていけば成長できる部分ではあると思いますが、そんな時間はビーコルにはなく、僕にもないと思っています。やっぱり今シーズンに優勝したい。負けながら成長していくことだけでは語れないというか、やっぱり優勝を目指しているからこそ、1試合1試合を無駄にはできない。これは早急にもっと僕がやらなければいけない課題だと思うし、そこはもう一つ、二つとステップアップしていきたいです」 得点とアシストをバランス良く駆使することができ、勝利へ導く試合はこれまでも見られている。新たにカイ・ソットが加わったが、新戦力たちとのケミストリーも高まってきている。仲間たちの助けこそ、河村の進化に欠かせない大きな要素でもある。
泉誠一