日銀、大規模緩和を維持 「いま金融緩和を解除しても景気が冷え込むだけ」佐々木俊尚が解説
ジャーナリストの佐々木俊尚が12月20日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。大規模緩和の維持を決めた日銀の金融政策について解説した。
日銀の金融政策決定会合、大規模緩和を継続
―– 植田総裁)基調的な物価上昇率が2025年度にかけて、物価安定目標に向け徐々に高まっていくという見通しが実現する確度は引き続き少しずつ高まってきているとは思いますが、先行き賃金と物価の好循環が強まっていくか、なお見極めていく必要があると判断しています。 ―– 日銀は12月19日に開いた金融政策決定会合で、大規模緩和策の維持を決めた。総裁は会見でも2%の物価上昇目標の持続的な実現を慎重に見極める姿勢を強調した。 飯田)事前には「マイナス金利が解除されるのではないか」などと言われていましたが。 佐々木)新聞・テレビでは「早く解除せよ、金融正常化せよ」の大合唱なのですが、なぜそんなことを言うのか、逆に不思議なぐらいです。景気が悪ければ大規模緩和を持続させる必要があるし、景気がよくなってインフレが進行するのであれば、金利を上げるべきです。それは当然のバランスの話だと思います。しかし、まるで金融緩和、マイナス金利が続いていること自体がこの世の悪のようになっている。よくわからないですよね。
「いま金融緩和を解除しても景気が冷え込むだけ」という判断
佐々木)植田総裁が言っていることは、とても真っ当だと思います。現状、物価(上昇率)が3%ぐらいまで上がっているのですが、まだまだ輸入物価の上昇によるコストプッシュインフレの状態です。「物価が上がって賃金も上がる」というプラスのスパイラルではないので、いま解除しても景気が冷え込むだけという判断です。それはそうだと思います。
2024年の春闘で賃金が上がり、「物価の上昇以上に賃金が上がる」という期待感
佐々木)今後の可能性としては、今年(2023年)の春闘で大企業を中心に賃金が大きく上がったではないですか。あの波がもう1回、来春の春闘でもくるのではないかという期待があります。 飯田)2024年の春闘で。 佐々木)いま、ようやく賃金が上がってきたけれど、それ以上のスピードで物価が上がっているので、実質賃金が下がり、生活が苦しいという実感が広がってしまっている。それをうまく反転させる必要があります。物価を下げて実質賃金を上げるのではなく、物価は上がっているけれど、それ以上に賃金が上がるという期待感で「実質賃金を上げていく」という流れにしないと、またデフレに戻ってしまうかも知れません。