日銀の令和5年度決算:利上げによる逆鞘の発生が近づき、日銀の財務の安定性が試される局面に
日本銀行はいままでの遺産(自己資本)を取り崩す局面に
日本銀行が政策金利を+2.8%まで引き上げて債務超過となる可能性は低いが、+0.6%までの引き上げであれば、来年前半にも考えられるところだ。その結果、日本銀行は今まで拡大してきた過去の遺産とも言える自己資本を、追加利上げの過程で取り崩していくことになる。 その過程で、金融市場は日本銀行の財務の安定性への不安を高めていくのではないか。さらに追加利上げの過程で、円高が進み、日本銀行が保有する外貨建て資産に評価損が膨らむ、あるいは株価が大幅に下落して、保有するETFに含み損が生じ、日本銀行が大規模な引き当てを迫られれば、それらも収益を悪化させ、バッファーである自己資本はより急速に減少していくことになる。 日本銀行の財務の安定性が、異例の金融緩和のもとで積み上げられてきた自己資本という遺産によって、この先どの程度持ちこたえることができるかが、いよいよ試されることになる。 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
木内 登英