定額減税、給付金…およそ37.4兆円規模「岸田首相の総合経済対策」が日本経済に与える影響【三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジストが解説】
※本稿は、チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)による寄稿です。
●経済対策は日本経済の成長型経済への転換を目指し、定額減税、給付金などが盛り込まれた。 ●真水は20.9兆円程度に、コロナ対策に比べると縮小したが、コロナ前をみれば依然規模は大きい。 ●一定効果は期待できるが潜在成長率の3年で1%は高い目標、施策の進捗の定期点検は必須。
経済対策は日本経済の成長型経済への転換を目指し、定額減税、給付金などが盛り込まれた
政府は11月2日の臨時閣議において、賃上げや国内投資の促進策を盛り込んだ「デフレ完全脱却のための総合経済対策」を決定しました。今回の総合経済対策は、日本経済を「コストカット型経済」から「成長型経済」に転換することを目的としており、過去30年にわたって賃金や設備投資などが抑制されてきた状況から脱し、持続的な賃上げや活発な投資が実現するための具体的な施策が、「5本の柱」にまとめられました(図表1)。 注目されていた減税策については、1本目の柱である「物価高から国民生活を守る」に盛り込まれました。それによると、2024年6月から、納税者と配偶者を含む扶養家族1人あたり4万円(所得税3万円、個人住民税1万円)を差し引く定額減税が実施されることになります。また、住民税の非課税世帯には、1世帯あたり7万円が給付されますが、3月に決定した物価高対策の3万円の給付と合わせると、給付金は10万円になります。
真水は20.9兆円程度に、コロナ対策に比べると縮小したが、コロナ前をみれば依然規模は大きい
今回の総合経済対策の規模は37.4兆円程度で、このうち国・地方の歳出(いわゆる真水)は20.9兆円程度となりました。なお、11月10日に閣議決定された2023年度の一般会計補正予算では、総合経済対策の関係経費として13.1兆円が計上されました。これに伴い、国債が追加で8.9兆円発行されることになったため、総合経済対策の裏付けとなる補正予算の7割近くが国債で賄われることになります。 ただ、補正予算に計上された13.1兆円には、2024年6月から始まる所得税と住民税の定額減税などの経費は含まれていません。これらを含めると、17兆円台前半に膨らむ見通しとなり、財源を国債に依存する流れが続くことも考えられます。今回の真水(20.9兆円程度)は、新型コロナウイルス禍以後の経済対策における金額(30兆~40兆円台)と比較すれば、かなり縮小しましたが、コロナ前と比べれば依然規模は大きいといえます。
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