林遣都 スペシャルインタビュー FRIDAY編集部で明かした本音「もっとエグい記者を演じたい!」
映画『隣人Ⅹ -疑惑の彼女-』で週刊誌記者役を熱演 ″撮られる側″から″撮る側″に チャレンジして辿り着いた新境地
◆「振り切った役を演じられるのが 役者の醍醐味です」 「……ここから世の中に、それまで誰も知らなかった情報が発信されているんだと思うと、ロマンを感じます。情報を売ったり、買ったりするって面白い発想ですよね。最初に誰が考えたビジネスなのか、原点が気になります」 赤ペン片手に…林遣都 カッコよすぎる編集部員姿【写真】 FRIDAY編集部員がつい2時間前まで徹夜で原稿を書いていたデスクに座り、俳優・林遣都(32)は感慨深げだった。 林は12月1日公開の映画『隣人X -疑惑の彼女-』で、疑惑の人物・柏木良子(上野樹里)に恋してしまう週刊誌記者・笹憲太郎を演じている。「普段は撮られる側ですが……」と、林が一つ一つ言葉を探すようにゆっくりと話し始めた。 「SNSなどが発達して、誰もが情報に飢えている今だからこそ、『情報発信する記者』という役にとても興味がありました。 僕が演じた笹はもちろん、人を傷つけたいとは思っていません。でも、そうせざるを得ない状況に立たされ、最終的に愛する良子を追い詰め、傷つけてしまった。残酷だけど、意思に反して人を傷つけてしまうことは、どの職業でもあるなと演じながら思いました」 役に深く入り込む林だからこそ、『隣人X』の撮影は苦しかったという。 「演技で人を殴ることもあります。でも『これは現実ではない』と、実際に殴って傷つける訳ではないので演じながらどこか一線を引いている部分がある。 ですが、人を精神的に追い詰めたり陥れたりする役は、自分自身に負担がかかるんです。人を傷つけ、自分も傷つけというダブルパンチだったので……。撮影中は役と切り離して自分を客観視することが難しかった」 自らの職務と恋心との間で板挟みになり、終始思い悩むという難しい役どころ。だが、笹を演じきったことで、俳優として″持っていないといけない″マインドに気付くことができたという。 「今は情報が溢れているからこそ、誰しも自らを人と比べてしまいがちだと思います。自分自身について考え込みやすい時代、というんですかね。笹も自信がなくて、自分を認めてもらいたい気持ちが強い。僕も自分に自信があるわけではないから、周囲には常に認められたいと思っています。でも、そういう気持ちがないと、誰かに必要とされ続けないといけない俳優という仕事をやっていくのは難しいと感じました」 ’07年に映画『バッテリー』の主役で俳優デビューしてから16年。今作では週刊誌記者を演じる一方、実生活では逆に週刊誌から追われることもある。だが、林に言わせると、それは「仕方のないこと」だという。 「ドラマや映画の打ち上げの後など、知らないところで撮られた写真が掲載されていて、嫌な気持ちになったこともありました。でも、改めて考えると、そこも含めてエンターテインメントなんでしょうね。 芸能界の人間である以上は犠牲にしないといけないことだってあるし、それがまた表現につながっていく。そもそも、誠実に生きていれば何を撮られても問題ありません。だから週刊誌に対して敵意もないんです」 俳優として15年以上のキャリアを積み重ね、話題作に数多く出演してきたが、自信を失い傷つくこともあった。それでも演技を続けられているのはなぜか。 「大袈裟じゃなく『作品を観て命を救われた』とか『明日から頑張って生きていこうと思えた』といった声を頂くことが多いんです。そう言ってくれる人が一人でもいる限り、頑張り続けようと思っています」 日曜劇場『VIVANT』では潜入捜査中に仲間に見捨てられた公安刑事を、ドラマ・映画『おっさんずラブ』では主人公と恋仲になる同性愛の青年を演じるなど、話題作でインパクトの強い役を任された林。今後演じたい役はあるのかと問いかけると、ニヤリと笑みを浮かべた。 「笹みたいなピュアな記者ではなく、もっとエグい記者を演じたいです。笹は他人の人生を覗いたり、踏み込んだりすることに戸惑う場面も多かった。だからこそ、次はもっと振り切った役を演じてみたいと感じています。それも役者という仕事の醍醐味の一つですから」 常に求められる存在であるために――。苦しみながらも、林は歩みを進めていく。 『FRIDAY』2023年12月8・15日合併号より
FRIDAYデジタル