「就任していたら、再生は実現不可能だった」傷だらけの女子医大、新理事長をめぐる攻防の舞台裏〈“女帝の亡霊”を振り払い…〉
元理事長の岩本絹子氏による乱脈経営によって、深刻な危機に直面している、東京女子医科大学(東京・新宿区)。10月23日の臨時理事会で、学長に選ばれていた山中寿(ひさし)氏が、理事長も兼務することが決定された。 【画像】女子医大の「女帝」と呼ばれていた岩本絹子元理事長 実は、前日まで“別の人物”が理事長に内定していたが、学内の強い反発で白紙となっていたことが取材で明らかになった。 「もし、内定していた人物が理事長に就任していたら、退職する職員が相次いで、女子医大の再生は実現不可能だったと思います」(女子医大の現役教授)
元理事長が招いた“医療崩壊”
一体、どういうことなのか。これまでの経緯を振り返ってみたい。 2019年に女子医大の理事長になった岩本氏は、強引なリストラや、意に沿わない職員に対して報復的な人事を行い、医師や看護師などの医療スタッフを大量に失った。特に大学病院の高度医療に欠かせない集中治療室(通称:ICU)の専門医が、1人を除き全員退職するなど、現在も崩壊状態が続く。 この裏で、岩本氏が必要性のない職員を同窓会組織「至誠会」から出向させ、総額2億5000万円を架空請求させていた。これらの疑惑を、週刊文春がスクープしている。 今年3月、警視庁捜査二課は、岩本氏の自宅や女子医大などを特別背任容疑で一斉に家宅捜索を行った。これを重く見た文部科学省は、第三者委員会による実態調査を同大に指導する。 8月、第三者委員会が調査報告書を公表して、岩本氏を厳しく批判した。 「人的資源を破壊し、組織の持続可能性を危機にさらす財務施策が、現在のような窮状に追い込んだものであり、経営責任は極めて重い」 そして岩本氏は理事長を解任され、女子医大を追放された。
諮問委員会が推した理事長候補は“辞退”
岩本氏の暴走に加担した理事たちは辞職せずに留まり、女子医大の再生計画を作る諮問委員会のメンバーを選出する。委員長の岩田喜美枝氏は、去年7月6日にホテルニューオータニ東京の高級和食店で、岩本氏が招いた懇親会に参加していた関係だ。