【総動員できないプーチン】ロシア国内への影響と戦争疲れの促しが戦争終結への道
ロシア領内の変化が戦況を変える
ジョージ・ウィルは米国、特にワシントンで諸方面に影響力を持つ優れた論説家であり、立派な歴史家である。彼の歴史に関する造詣には深みがある。 今のウクライナ戦争と中東戦争は下手をすると、第三次世界大戦につながりかねないとのウィルの考え方に賛成である。そして、それを止めるためにはウクライナでプーチンを止めることが重要である、という見立てにも賛成である。 バイデン政権はウクライナに供与した兵器をロシア領内攻撃に使用することを許さず、ウクライナ戦争をエスカレートさせないことに重点を置いているが、これは間違った政策であるように思われる。 ロシア人兵士の死傷者は50万を超えてきていているが、ロシア人にはさらに戦争を実感させることが必要である。ロシア領内で通常の生活を送れる限り、ロシアがウクライナ戦争をやめたいと思う強い動機は出てこない。ウクライナによるロシアのクルスク州への越境攻撃は一つの手であるが、さらにロシア領内を自衛権行使の範囲内でたたくことが有効であろう。
ロシアの戦争疲れを促せ
この間、トランプは「ロシアはナポレオンにもヒトラーにも勝った国である。勝つのは無理である」と発言した。しかし、ロシアは、ナポレオン戦争後、日露戦争では日本に敗北したし、第1次世界大戦ではドイツに敗北した。日露戦争では国内でガポン神父を中心とするデモなどがあったし、第1次世界大戦ではロシア革命があった。 ロシア国内でのこの戦争への支持は、総動員をかけられないことからも明らかなように、それほど強くないように見える。それゆえ、ロシア国内で戦争疲れを促進することが戦争終結に役立つと思われる。 西側が核兵器使用警告などのロシアのレッドラインを尊重することが戦争の長期化とウクライナの敗北につながり、ウィルも言うように、第3次大戦にもつながりかねないと憂慮される。
岡崎研究所