「金融緩和の終焉」はマンション価格暴落の引き金になるのか?
ここ十数年の東京都心のマンション価格は、「異常」の一言に尽きる。不動産業界の方々と話していると「高すぎるよ」という声を聞くことがほとんどだ。ただ、「まだまだ上がる」なんておっしゃる御仁には会ったことがない。そこがあの平成バブルの時と大きく違うところだ。 業界関係者の誰もが「高過ぎる」と感じているということは、誰もが「バブル崩壊」を恐れていることでもある。ニュースなどで報じられているマンション市場動向は、依然として「値上がりが続いている」という内容に終始している。 ただし、最近ではそこに有意な変化も出てきた。 例えば「マンションナビ」というサイトを運営するマンションリサーチという企業が、東京都23区中古マンション価格の実態を調査したところ、「価格が下落した中古マンション」が平均で30%以上増加している、という結果が出たのだ。 ただしそれはあくまで「23区全体」でのこと。都心5区のデータでは、依然として価格は上昇傾向である。逆に言えば、23区の相場を押し上げているのは、「一部の限られた区」なのだ。 私は東京23区で販売されている新築マンションをすべて調査し、各物件別の資産価値を評価するレポートを有料頒布している。新築マンションの価格政策や販売動向については、それなりに理解しているつもりである。 このレポートの作成・更新作業の過程で最近実感することは、「実需エリアの需要が弱い」ということだ。つまり、都心5区以外では新築マンションの販売は振るわず、「値引き」という実質値下げが行われている様子が窺える。 今や新築マンション価格は高騰し、23区の外郭周辺や湾岸埋立地エリアでもファミリータイプやタワマンの販売価格が7000万円から1億円程度となっている。サラリーマンの平均所得である年収400万円台で買えるレベルの2倍以上。これでは売れないのは当たり前だろう。 だからここ数年は、夫婦でペアローンを組んでの購入が主流になっている。ただ、結婚した3組に対し1組以上が離婚する今の日本で、ペアローンを組むことは危険極まりないレバレッジだ。 見てきたように、東京都心とその周辺でのマンション市場は、新築・中古ともに価格は「限界」ラインに達している。そこに今回の「17年ぶりの利上げ」である。これは限界ラインに達したマンション価格が下落に転じる大きなサインではなかろうか。 日銀は年内にあと何回か利上げ行う、という観測も出ている。市場の潮目は今、変わりつつあるのかもしれない。 文/榊淳司 写真/時事通信社 日本銀行